第7節

第7節 ①

「事務処理完了、っと」


 パソコンでまとめたデータをCDに移し終えた片萩劫かたはぎこうは、大きく息を吐いた。この二週間ほど溜まりに溜まっていた事務処理がやっと一段落ついたのだった。


 仁後にご研究員からの依頼を完遂して数日後。あれから野良の変異血種ミュータント駆除は少し落ち着いたが、そうすると今まで手がつけられていなかったデータ整理などに追われることになった。


 ……あの夜。依頼された変異血種ミュータントの駆除を終えたことを仁後にごに報告すると、仁後にごは「はは、さすがだね。事後処理は私がしておくよ。今回の報酬金もいずれ支払うよ」と言った。必要以上に関わりたくないので、こうは何も聞かなかったし、伝えなかった。


 数日後、事務所の預金通帳には、仁後にごからの特別報酬金が振り込まれていた。


「結局、時が経てばいつもどおりか」


 こうはため息をつく。あの夜、自分が選んだ行動は正しかったのだろうか。もっと、正しい選択肢が選べたのではないか。そんなことばかり考えてしまう。


 ――久しぶりにちゃんとした睡眠を取ろう。そうしたら、頭もスッキリするはずだ。


「やあ、カタハギコ―くん! 調子はどうだネ?」


 今から休もうかと考えていたのに、ドバンッという豪快な音とともに事務所の扉が開かれた。脈絡なくいきなり事務所に入り込んできた自称探偵からの問いかけに対して、こうはため息混じりに返答する。

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