第6節 ④
「……わかりました。ほんとうに、それでいいんですね?」
「うん……ごめンね、きみみたいなこどもに、こんなこと、任せちゃって」
少年は、リボルバー式拳銃を構える。銃弾は、すでに込められている。
「慣れっこだから、いいですよ。――あの男に、伝えておくことは、なにかありますか?」
「…………いいたいことは、たくさんあるけど、こういうのはね……なにもいわないほうが、後々心に残るんだよ。だからね――何も、残さないの」
そう言って、彼女は目をつむる。
少年は銃口を、化物になっても最後まで愛した人を信じた人間へと向けた。
「……さようなら。あなたの愛は、理解できませんが――それでも」
――美しいと、思いました。
波打ち際の音に一瞬、銃声が混ざる。心臓部へと撃ち込まれた弾丸は、
本来ならば、
最後まで自分の恋人の愚かさをも愛した女性は、砂浜の上で安らかな死に顔を浮かべていた。
……これから、
そのとき、あの男はどんな顔をするのだろうか。
これから、あの男はどんな人生を歩むつもりなのだろうか。
それは
「なぁ、――。俺はまた、誰も救えなかったよ」
そう。誰も救えなかったのだ。この人も、あの男も。
元から救えるわけなかったのかもしれない。けれど、愛し合ってる二人がこんな悲しい結末を迎えない方法だって、どこかにあったはずだった。
――そう思わないと、あのときの〝俺〟と〝彼女〟にも、救いのある結末があったはずだと信じられなくなってしまうから。
「〝俺〟はこれで――お前を殺すことに、近づいたか?」
少年の呟きに、答えるものはいない。
今宵は半分の月が、少年を照らすだけだった。
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