第6節

第6節 ①

 砂浜で、一人の女性が砂浜で佇んでいた。こうは右手にリボルバー拳銃を持ちながら、その人影へゆっくりと近づく。

 本来なら右手にオートマチック、左手にリボルバーというスタイルなのだが、昨日の負った左腕の傷が完全に癒えていないため、自由が効く右手にリボルバーを構えるようにした。


 ――昨日のような、失態は犯さない。どうにか無事に済ませようなんて、考えてはならない。昨日の時点で、ほんの少しのことがきっかけで暴走を起こしたんだ。このままでは、彼女は本当の化物として、人を殺してしまうのも時間の問題だろう。

 こうは彼女に、銃口を向ける。一撃で、決める。そのつもりだった。


「ねえ、きみ」


 だが、女性から声をかけられる。こうは驚いた。


「まさか――」


「あれ。聞こえナかった、かな……ごメんね、ちゃんと話スの、久しぶりだカら」


 その声は、目の前にいる女性からだった。しどろもどろだが、昨日とは違って、意味が通じる言葉を紡いでいる。


 ――思考能力が、戻っている?


 こうは構えていた拳銃を下ろして、変異血種ミュータントになった女性に声をかける。


「……聞こえていますよ」


「よかった。ちゃんと、話せテる、みたい」


 どういうことなのだろう。こうは、困惑する。


「あなたは……彼にお願いされて――わたしを、殺しに来たんデしょ? 昨日、みたいに……」


「ッ……!」


「だい、じょうぶ。わたシから、あなたに、危害をくワえる気は、ないから。けど……あなたが、わたしを、殺すのも――抵抗、しないから」

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