第4節 ③

「さて、ここから本題なのだが――うむ、結論から言おう。ワタシが死にかけたのはキミのせいだよカタハギギコーくん!」


「はい?」


「そんなアホを見るような目を向けないでくれたまエ! キミが依頼を受け、捕縛か駆除に失敗した変異血種ミュータント――それはワタシが調査している失踪事件の当事者だったんだヨ。本当に奇遇な話もあるもだねエ」


「……なんで僕が、変異血種ミュータントの駆除を依頼されたって知ってるんです?」


 こうは純粋な疑問を投げかける。


「なに、簡単なことだヨ。ワタシがこの街に足を運んだのはつい最近だガ――それでも『化物を見た』『何か危ない薬物が出回っている』という噂は耳にしていル。この街でそのような噂が立つとすれば――変異血種ミュータント絡み以外無いだろウ? それならば『変異血種ミュータントを駆除してほしい』という依頼も当然、この事務所に舞い込んできているはずダ。そして今、キミは怪我を負っていル。それも普段のキミならありえないような怪我をネ。だとすればそれは変異血種ミュータントを捕縛・駆除しようとしたが――何らかの要因で失敗しタ。それが真実だろウ?」


「…………その通りですよ。悪かったですね」


「いーやいヤ! 私は別にキミを責めているわけではないヨ! ただただ因果関係がハッキリしている事実を述べているだけサ!」


 僕も悪いがあんたの性根も悪い、と劫は言いたくなったが黙っておくことにした。


「ま、しかし――キミが失敗したのは、ワタシにとっては最悪だったが、キミにとっては幸運だったヨ。なにせあのまま変異血種ミュータントの駆除に成功していれば――キミはこの事件の真実に辿り着けずに終わっただろうからネ」


「……真実? あなたの説明を聞く限り、失踪した女性が変異血種ミュータントとなり、その人が研究所に保護され、逃げ出した――そんな単純な事件に、他に何の真実が?」


「うむ、キミが辿り着いたその真実は間違っていないだろウ。けれど、それだけでは真実は半分なのだヨ。カタハギコーくん。キミにとっては、少し胸がクソ悪く話かもしれないガ……それでも聞くかイ?」


「……聞かない、と言っても勝手に語るでしょう。あなたは」


「ふっ……よくわかってるじゃないカ。それじゃあ、聞いた上で――この依頼を完遂するかどうかを決めるといイ」


 自称探偵は、語りだす。とある女性が失踪した出来事についてと、変異血種ミュータントが研究所から逃げ出した事件、その関連性について。

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