第4節 ②

「ヴェイラーさん。久しぶりですね。あなたが何のアポもなしに現れるのはいつもどおりですけど――何かあったんですか?」


「ハッハー! それがね、聞いてくれたまエ! とある失踪事件について調査していたのだがね――なんト! 失踪した人は変異血種ミュータントになってしまっていたのだヨ!」


「それはまた、ご愁傷様で。その口ぶりからすると、変異血種ミュータントに関して調査していたわけじゃなくて、運悪く関わった事件が変異血種ミュータントに関連する事件になってしまったみたいですね」


「イグザクトリィ! さすがカタハギコ―くん! いやーハッハ、金銭も尽きてきたので小遣い稼ぎにと軽く承ったのが失策だったヨ。おお、あそこにいるのは失踪したレディじゃないか楽な仕事だったなハッハと声をかけたら急に襲ってくるのだかラ。流石に殺される気がして少しチビったし、この調査依頼は途中で打ち切るつもりでネ」


「……あなたなら、変異血種ミュータント相手でもどうにかなるんじゃないですか?」


「いやいや、ワタシは生身の人間だヨ? 変異血種のような化物――おっと失礼、超常的生物が存在している場所に自ら足を踏み入れていくなんて自殺行為に等しいサ。それにワタシの戦闘能力なんて皆無に等しいからネ。そこらのチンピラと殴り合いしたら五秒でノックアウトされる自信があル!」


「何度もピンチを切り抜けたっていうのは、嘘だったんですか」


「失礼な! ワタシは推理のための情報収集や犯人を泳がす目的以外では嘘はつかないことを信条にしているのだヨ? この国では三十六計逃げるに如かずと言うだろウ。かの探偵の祖が日本武術を極めていたように、ワタシは逃走術を極めているのだヨ」


「本当に日本武術だと信じてるですか? あれを?」


 こうは呆れ気味に自称探偵の言葉を聞く。

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