第4節
第4節 ①
「つ……」
普通の人間なら即座に治療しなければ命も危ういほどの傷だったが、
だがそれでも
不覚にも、普段ならありえないミスで
しかし、この傷でまたあの
「……あんな断絶的な言葉で、あのときのことを思い出すなんてね」
ぼそりと呟く。確かに、あのときのことは自分にとってのトラウマだ。けれど、少しは克服できていたと思っていた。
――否、忘れていたと、思っていた。夢以外では、忘れられていたはずだった。けれど実際はそうじゃなかった。〝俺〟は全然、あの頃から進めていなかった。
「ハーッハッハッハッハ! 聞いたよ、カタハギコーくん! 今はあのいけ好かない女が旅行中で留守にしているんだって!? それはそれは嬉しいことだが、たった一人で事務所を任されていては解決できていない事件も溜まっていることだろウ! 頼りにしたまえ心の友よ、ワタシはそのヒントを持ってきタ!」
「……久しぶりですね。傷に響くんで、あまりうるさくしないでくれます?」
「うむ、すまない! だが、うるさくしないのは、無理だ! 何故なら豪快に、大胆不敵に言葉を発する――それが真・探・偵こと、このワタシ! エイル・フォン・ヴェイラーであル!」
流暢だがどこかおかしい日本語を話す洋風の長身男性は、そう答えた。エイル・フォン・ヴェイラー。自称・真探偵。豪快奔放な調査を行い、粗製濫造な推理を繰り出し、驚天動地な真実を導き出す――という噂がある男。
二年ほど前、ヴェイラーが関わっていた事件に
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