第3節

第3節 ①

「すごい技術だな、これ」


 こうは手に持っている、最新型の小型デバイスを見て率直な感想を呟く。デバイスの液晶画面には、まるでカーナビのように地図が表示されている。その地図を頼りにこうは駆除を依頼された変異血種ミュータントを追っていた。


 劫も一応携帯電話を持っているが、そのケータイの見た目はサラリーマンが使うような素っ気なさで、さらには機能も最低限のものしかなく絵文字もマトモに表示できないために、同級生の女子には「片萩くん……そんなんじゃ彼女出来ないよ」と憐れみの目を向けられたことがある。


 余計なお世話だ――とは思わなかったが、何故ケータイが時代遅れなぐらいで憐れみの目を向けられなければならないのか――とは思った。

 普段は最低限の電話とメールが使えていればいいので、こうは何も不便さを感じていなかった。


 だが、このような多機能なデバイスを実際に手にしてみると、やはり最先端の機能は便利なのかもしれないと感じる。


「近いな」


 デバイスの液晶画面に映っている地図を見て呟く。

 どうやら、駆除対象の変異血種ミュータントは波止場付近に留まっているらしい。

 こう仁後にご研究員との会話を思い出す。


『片萩くん。一つ、心配していることを聞いてもいいかな』


『? 構いませんけれど』


『実はね、逃げ出した実験体というのは……その、元は人間だった成人女性が変異血種となってしまったものなんだ。突然変異を起こしてしまったところを、うちの研究所で保護していたのだが……思考能力はほとんど失われていて、君なら一目見れば変異血種なのだとわかると思うが、身体はまだ人間の面影を残している。君はそれでも……駆除ができるかい?』


『それは、僕が人間の形をした変異血種ミュータント相手だと躊躇ってしまうのではないか、という心配ですか?』


『まぁ、ね。君のことは 自分と似たような立場の変異血種ミュータントを相手にしてしまうと、そうなってしまうのではないかって――』


『そこは心配する必要ありませんよ。僕は今までだって、人の形をした変異血種ミュータントを排除してきた経験があるんですから』


『そうか。それを聞いて安心したよ』


『……ただ、僕は危険性がある判断した変異血種ミュータントしか殺して駆除するようなことはしません。もし、凶暴性がなく捕獲するこが可能だと感じたなら、無力化して捕獲することも検討します。それでもいいですか?』


『そうか――。うん、そうだな。わかった、その判断は君に任せよう』

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