第2節

第2節 ①

 夢を見た。そんな気がした。


 予め設定していた携帯電話のアラーム音が室内に鳴り響く中、その持ち主である少年――片萩劫かたはぎこうは目を覚ます。

 昨夜は事後処理も合わせて徹夜。夜食だか朝食だかわからない食事を取り、朝日が昇りつつある中眠りについた。


 昨日だけではない。劫はここ数日間、ほぼ毎日が徹夜で夜間にマトモな睡眠を取れていなかった。

 いくら自分が通常の人とは違う身体を持つからといっても、元のベースは人間なのだから無茶を続けていたら身体にガタが来るのは当たり前だ。


 そろそろ自分の身体が限界を迎える頃だなと理解していた劫は、長めの仮眠を取ることにした。

 そのおかげか、目覚めた今は久方ぶりに調子が良い。と言っても、適切な睡眠時間を取れていないので万全には程遠いのだが。


「……そうか。センセイはまだ旅行中か」


 寝ぼけていた頭が覚醒してきて、やけに静かだなと思った劫は状況を理解する。


 そもそも、センセイが事務所にいたらマトモな仮眠など取れない。それにここまで忙しいのは、元はといえばセンセイが「そうだ! 佐渡に行こう!」と呟いた後、「それじゃコーちゃん! あとはよろしくねー! ダイジョブダイジョブ。最近は平和だしコーちゃんなら一人でも出来る。てゆーか、ほぼ一人でやってるようなものだし! おーいさっちゃん! 佐渡! 佐渡に行くわよ! トキとレインボータワーを見に行くわよ!」と、この事務所に居候している少女を連れて佐渡島に旅立ってしまったからである。

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