第8話 デジタルイラスト講座

 ユーキャンから目的の物が届く。段ボールに箱詰めされた教材の数々。


 宗介はさっそく郵便物を受け取り、部屋に戻り、包装を解く。初めて目にしたペンタブをパソコンに繋ぎ、さっそくイラストを、という訳にはいかず。まずは学びオンライン+というサイトにアクセスした。マイページを作り、CLIP STUDIOを立ち上げる。なお、操作がややこしいため1時間かかってしまう。


 なんとかCLIP STUDIOを使えるようになった宗介はさっそくデジタルイラスト講座の①基本操作編を読む。


 みなさんはパソコンのペイントツールを使ったことがあるだろうか。宗介はあまりない。イラストを描くときは鉛筆で下書きしてボールペンで本書きをする、いわゆる紙派だったため、パソコンのツールに疎い。そんな宗介がデジタルに手を出して1番驚いたのはレイヤーだった。


 レイヤーとは、要は下書きの事だ。下書きを何枚も何枚も重ねて1枚の絵にする。レイヤーを入れ替えることで、例えば赤一色の絵にイラストを重ねたり、そのまま赤だらけにしたりできるのだ。これは大変驚いた。今まで鉛筆とボールペンという概念しかなかった宗介の中にいくら失敗してもやり直せる下書き、レイヤーという魔法が誕生した。


「ふう……今日はこんなところか」


 3時間ほど教材を読み、ペンタブに慣れた宗介。さっそく課題に取り組む。


 ユーキャンでは3回の添削課題があり、宗介は初心者の添削課題に取り組む。ここで問題になったのは、添削課題は決められたイラストに修正を加える作業であり、オリジナルのイラストをチェックしてもらうということではなかった。


 これではPDCAサイクルが回らない。やはり、できたデジタルイラストを身近な人できれば絵心のある人、唐井ひつじ辺りに見てもらうのが良さそうだ。すっごく嫌ではあったが、これも上達するため。宗介は観念した。


 3時間の勉強の結果、なんとか添削課題をクリアしてメールに添付し、送信する。


 ここで注目しておきたいのが、デジタルイラスト講座はあくまでペンタブの使い方を学ぶ場であり、上達する場ではないということだ。


 継続は力なり。


 やっぱりエチエチなお姉さんや妹、素晴らしい萌え絵を書くには練習あるのみだということが分かった。ペンタブの使い方をマスターするのと並列で、紙で絵の練習をしなければならないと思った。


 たった4万4千円で誰でもイラストが描ける魔法は存在しない。ペンタブの使い方を覚えたその先に、宗介の目指すべく、ピクシブでの作品公開が待っている。であるからして絵を描くべし、描くべし、どんどん描くべし、なのだ。


 小説家になりたいやつは、どんどん書くのが一番の近道。イラストレーターになりたいやつは、どんどん描くのが一番の近道。編集者になりたいやつは、どんどん編集するのが一番良い。そんなことを三木さんが著書でおっしゃっていたのを思い出す。


 ま、これからさ。


 青春短し、恋せよ乙女。


 宗介はクリエイターという職業にぞっこんだった。まだまだ高校生なのだから。恋の経験はたくさん必要なのだ。

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