第2話 PDCAサイクルを考えます
家に帰りパソコンの電源を付けた宗介はイラストレーターになるためには何が必要かを真剣に考えた。ネットの海を漁っていると、こんな逸話を見つけた。
皆さんはピカソをご存知でしょうか。
ピカソは、人が作品という「モノ」にお金を支払うのではなく、「物語」を買うということを知っていた。ある店でピカソがウェイターにスケッチを求められたときのエピソードを次のように紹介しています。
「このナプキンに何か絵を描いてもらえませんか?もちろん、お礼はします」と。 ピカソは、これに答え、30秒ほどで、小さな絵を描いた。 そして、にっこりと笑って「料金は、100万円になります」と言った。
ウェイターは驚いて、「わずか30秒で描かれた絵が100万円ですか!?」と聞いた。それに対して、ピカソはこう答えたという。
「いいえ、この絵は30秒で描かれたものではありません。40年と30秒かけて描いたものです。」(1)
1. (なぜゴッホは貧乏で、ピカソは金持ちだったのか? これからを幸せに生き抜くための新・資本論/山口揚平)Kindle 629
宗介はこの話を聞いて絵は“才能”であると理解する。ピカソほどの大天才が、さらに40年の努力を継続したからこそ、たった30秒の絵が100万円の価値をつけたのだと実感した。ピカソは金儲けの天才でもあったと記述されているが、それは割愛する。
絵に関する記事を探しているとこのようなものを見つけた。【画像】漫画家さん、絵は才能ではない事を完全証明してしまう。というまとめサイトだった。
納豆まぜおさんが、神絵師は神料理人じゃないよっていう話。とツイッターにあげていた。
こんな感じの話だ。登場人物はAさん、Aさんの友達。
「友達に神絵師がいる」
Aさん「ずる~い!!」
友達「えぇ?」
Aさん「私なんて一生懸命…1週間かけて描いた絵が全然誰にも見てもらえないのに」
Aさん「なんであんたが1時間てちょろっと描いた絵がこんなにすごいのよ!」
友達「それリプでもたまに言われるけど…あのさー」
友達「あんた料理上手いじゃん?」
Aさん「はい?」
Aさん「当たり前でしょ! 私調理師の専門学校行ってたし」
Aさん「レストランで働いてるし…」
Aさん「子どもの時からお母さんに教えてもらってたし!」
友達「それだよ」
Aさん「ん?」
友達「私も幼稚園のことからずーーーーーーーっと絵ばっかり描いてきたのよ」
友達「中学・高校と美術部だったし授業中も落書きばっかり」
友達「それから美大予備校通って美大行って家でもずっとイラスト描いて」
友達「ソシャゲ会社に就職して一日中会社でイラスト書いて家でも同人のイラスト描いて」
友達「ステータスでいったらこんな感じ絵に全振り」
数学 10
絵 300
アホ毛 20
ファッション 10
勉強 10
料理 10
友達「だから私が1時間で描いた絵は」
友達「2万時間+1時間で描いた絵なんだよ」
友達「それに自慢じゃないけど私…」
友達「料理はぜんっっっっっぜんできないからね?」
友達「チャーハンぐらいおいしく作れるようになりたい…」
Aさん「おしえよっか?」
「神絵師はずるくないし」
「神料理人もずるくないよ」
宗介はこの話を読んで、ピカソクラスの偉人になるには超絶な才能と超絶な努力が必要であることを知った。しかし、普通の神絵師になるならば2万時間+1時間だけでいいとも知る。もっとも、普通の人はイラストに2万時間も費やさない。それだけの努力ができるだけで一種の才能と呼べる。
「ツイッターの神絵師は小中高から描き続けて、予備校も大学も美術系。まいったな」
ため息をついて天井を仰ぐ。宗介はズブの素人であり、数年間、漫画のイラストを描いていただけだ。しかもブランクがある。野球部をやめた今、簡単にイラストレーターになれたらだけれど、人生そんな甘いもんじゃない。
ひとまずPDCAサイクルを回すことに決めた。イラストレーターになるにはどうすればいいのか? 計画を練ることから始める。ちなみにPDCAとは、Plan=計画、Do=実行、Check=評価、Action=改善、のことだ。
逡巡する。いきなりイラストレーターになるのは難しい。まずはネットにアップしてアクセス数を増やすことを目標とする。
そうと決まれば描くのみ。宗介は紙と鉛筆それから身近な漫画本を取り出して練習を始める。実に2年ぶりに描いたトレス絵だった。全然うまくないのはご愛嬌ということで。
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