第七十九話 私の行く道


 食事を終えて、セイゴさんとツバサさん、フゥはスズメさんに席を外せと言われて、部屋から退室した。

 私の目の前にいるのは、スズメさんとリョウゴさん。

 リョウゴさんは座っているスズメさんの後ろに立って、何とも執事らしい感じだ。


「この度はあなたに迷惑をかけてしまい、大変申し訳ありませんでした。代表して頭を下げさせてもらいます」


 深々と頭を下げるスズメさん。突然そんな事をしてきたので、私は慌てて「やめてください」と答えた。

 私は村の城主さんにそんな事をしてもらうまでの人じゃないんだから、本当にやめてほしい!


「なんとお詫びを申し上げればいいのか」

「スズメさん、私はツバサさんを消す為にこの世界に呼ばれたんですね」

「……はい、その通りです」


 目を一度伏せて私を見ると、スズメさんは眉を下げた。


「貴女を呼んだのは、リョウゴです。なので綾さんが帰りたいとおっしゃるならば、今すぐにでも帰す事は可能です」


 そうか、すぐにでも帰れるのか。

 私を呼んだ魔導士さんだけが、私を帰すことができる。

 その魔導士が、執事のリョウゴさんだとわかったのだから。

 あの世界に帰る、か。正直帰りたい気もするけど、今帰って私はどうすればいいんだろう。

 職を失った私の心は、まだちょっと傷ついている。


「でも、もしよければもう少しだけ、ここでの旅行を楽しみませんか?」


 思いもよらない言葉に、驚いた。

 こんな危ない存在を、いつまでもこの世界にとどめておくのは危険な筈なのに、なんでそんな事を言うのだろうか。


「僕は貴女がいてくれて、本当によかったと思っています。そして、ツバサにもセイゴにとっても。あの二人は僕らに依存している所がありましたから。だから王にも異常に恨みを抱いていたかと思います。まぁそれを言えるのはセイゴの方なのですが」

「セイゴさんですか」


 確かに、セイゴさんはずっと王に対しての過激な発言とか、態度とかあったけど。


「ツバサがアイツの面倒を見てはくれていたんですが、ツバサはあぁ見えて神獣。言い方は悪いかもしれませんが、神獣と人では必ず考え方の違いが現れます。だから人の心が分る人間でないと、貴女でないといけなかったのです」

「セイゴさんは、何をやらかすか分らないですからね」

「全く持ってその通りです」


 溜め息を吐くスズメさんに、私はクスリと笑みを浮かべる。

 そんな私に安心したのか、スズメさんは微笑みながら言った。


「しばらく、こちらにいてもらっても良いですか?」


 再確認の為だろうか、聞いて来た言葉に私は笑顔で答えた。


「もちろんです。私は、神獣を消す為に来たんじゃなくて、この村の生活を守るためにきたんですから」


 たまたま特別な力もついているみたいだし。

 まだこの生活が楽しめるというのなら、私は全力で楽しみたい。

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