第七十六話 衝撃の事実
「あれがセイゴさんのお兄さん、ですか?」
「あぁ、どうやらスズメと一緒にいたみたいだな」
なんというイケメン兄弟! 金髪イケメンお兄さんがいらっしゃるなんて!
うぉぉ、大人の雰囲気漂ってるイケメンだ。
村の重役って、みんなイケメンなの? そうなの?
ツバサさんにセイゴさん、お兄さんのリョウゴさんにスズメさん。
多種多様のイケメンをそろえてますってか?
心底羨ましい限りです。
そう言えば、いつの間にツバサさんはここに来たのだろう。
村にいる筈なのにいつの間にかセイゴさんに化けていたツバサさん。
瞬間移動的なやつで現れたのかな。
「ツバサさん、一体いつからここに……」
「先ほども姿を現したじゃないですか」
「だってさっきまでここにいたのは、セイゴさんが呼んだ六つ目の黒い神獣ともう一匹の神獣、あとシュタインさんで……」
「正解をおっしゃっていますよ」
裏表のなさそうな笑みで、私にそういってくるツバサさん。
どういう意味? シュタインさんは無表情で私の肩に乗っているし。
「あの、つまり、どういうことかというと」
「綾様、黙っていて大変申し訳なかったのですが私は『怒哀の神獣』ツバサです」
え、え、ええええええええ!
神獣って、ツバサさんが神獣? え、冗談。
え、あ、た、確かにツバサさんの姿ではあるけれど、両目の横になんか赤い点が二つずつ付いてる!
それが神獣の目の名残ってやつ!?
「神獣は人にもなれる奴がいるからな。そんなに驚く事でもないと思うぜ」
「セイゴさん冷静に言わないで! 初めてみた人は驚くでしょうが!」
『じゃあ私のことも驚いてくれるのかしら?』
楽しそうにそう言って言ってきたのは喜楽の神獣だ。
「そうだ。俺はお前の話も聞いてないぞ。兄貴がいないのにどうやって現れた」
『それはツバサちゃんも知ってると思うけど』
苦笑いをするツバサさんに、セイゴさんは睨んだ。
自分だけこの状況を理解できてないことに、苛立っているようだ。
大丈夫です。私も理解できてません。なんで私のところに喜楽の神獣が現れたのか。
「おい、ツバサどういうことだ」
「別に隠しているつもりはなかったのですが、綾様は特別だということですよ」
ツバサさんは私の姿を見て、微笑む。
「私たちを召喚できるのはごく限られた一部の人間のみ。それを無条件で召喚できるという力を持つ人間なんて、そうそういません。ですが綾様、あなたは私たちを自由に召喚できる力を持つ唯一の人間」
『だから言ったでしょ? あなたは特別だって』
「でも、私召喚なんて一度もありませんよ。勝手に現れただけで」
『その召喚するためのゲートをあなたが作れるということなの。無意識の状態ではあったけど、今回作ってくれたおかげで、私はここに現れることができたわ』
無意識の状態でゲートなんかできてしまうの!?
そんなゆるゆるな感じでゲートって作れちゃって大丈夫!?
『何はともあれ、綾さんが無事でよかったわ。せっかく会えたのに次に会う時が怪我をしているなんて私嫌だもの』
「次に会う時って、今初対面では」
『そうね、この姿では』
そう言って神獣様は粉を落とすように数回首を振った。
一瞬姿が見えなくなったと思ったら、いつの間にか目の前にいたのはこの前森であった少女のフゥだった。
「人間の姿の時はフゥと呼ばれてるけど、神獣の時は『喜楽の神獣』と言われているわ」
ニッコリと笑顔を向ける少女はあのサファイヤのような青い目ではなく、神獣の時の赤い目をしている。
え、フゥも神獣だったの!?
嘘でしょ。何これ、どういうこと。
「リョウゴが本来私を呼べる人なんだけど、最近仕事が忙しそうでね」
「俺以外に呼べる人間をこの世界に呼び出せたのはよかったことだな」
多分偶然そうなったのだろうけど、その結果オーライみたいな感じ何ですか。
もし私が特別じゃなかったらどうしてたんですか。
「じゃあフゥ、お前今まで別のところにいたのか」
「うん、森で生活してた」
灯台下暗しです! と自慢げにいうフゥにセイゴさんはため息をはいた。
確かにその通りだ。まさか森で生活しているなんて思ってもみなかったのだろう。
「いやー、私が森にいることは内緒だったんだよねー。ついつい綾さんに口が滑りそうになっちゃって。シュタインに止められてなんとかなったんだけど」
「またいつもの癖でツバサのこと話して熱くなったんだろう?」
「大事な妹ですから」
「姉さん、恥ずかしいのでほどほどにしてください」
威張っていうその姿はどこか愛らしい。
そしてその発言に恥ずかしがるツバサさん可愛い。
「へぇ、姉妹だったんですね、それは……」
一瞬時が止まった気がした。
ちょっと待て、今聞きなれない言葉が出てきたぞ。
「待ってフゥ、ちょっと待って」
「どうしたの綾さん?」
「ツバサさんのこと、ずっとちゃん付けで呼んでたよね?」
「うん! ずっとそう呼んでるからね!」
「で、ツバサさんだけど、あの、いま聞いた感じだとですね。ツバサさんが、女性という風に聞こえたのですが」
もうなんか混乱しすぎて口が吃っている。
うまく言葉が回らない。私はひどく動揺しているのだ。
いや、だってまさかね。
「そうだよ、私たち仲良し姉妹の神獣です!」
ツバサさんの腕に嬉しそうにしがみつくフゥ。
その行動を困ったような顔をして見ているが、どこか嬉しそうなツバサさん。
咄嗟に両手で顔を隠した。
やばい、今、一番衝撃受けた。
二人が神獣だってこともそうだったけど、ツバサさんが女性ってことに一番の衝撃だ。
確かに最初に確認しなかった私も悪いよ。名前で男だろうなって判断したあたりね。でもさ、本当にそうなのですか?
信じられずにツバサさんを見ると、笑みを返してくれる。
なんてカッコ可愛い女性なのだろうか。
農家の女性だったのかこの人は。
「おい、お前たち。いいたいことがあるなら帰ってから話せ」
ドスのきいたような低い声に、私以外の人はのんきに「はーい」と答えた。
セイゴさんのお兄さん、めっちゃ怖い。
「さてと、帰ろうか。ツバサ、悪いんだけど乗せて行ってもらっても良いかな?」
「あの霧の瞬間移動を使えば早いんじゃ」
「それもそうなんだけど、僕はツバサの背に乗るのがすきでね」
「我が村の城主の頼みならば、何なりと」
深い会釈をしたツバサさんは背中から漆黒の羽を生やし、そして神獣の姿へ変わった。
「うん、いつ見てもツバサちゃんはかっこいい!」
「乗り物には最適だよなー」
スズメさんとセイゴさんのこの感想の違いは……。
本当にかっこいい時とそうじゃない時の差が激しいなセイゴさんは。
こうして私たちは、ツバサさんの背に乗って村へ戻ることになった。
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