第二十二話 朝ごはん

「おはようございます、綾様」


 食堂に入ると朝食のいい匂いと共に、澄んだ声が聞こえてくる。

 キチッと昨日と同じ服を着て、キレイに座っているツバサさんと、未だに眠いのかだらしなく座って大欠伸をしているセイゴさんの姿があった。

「おはようございます」と頭を下げて、私も昨日と同じ席に腰を下ろした。

 チラリとみると奥の席は昨日と同じく空席で、食事も用意されていない。

 やっぱりその席の人は今、城にはいないのかな。


「これからのことなのですが、綾様には少しずつこの世界の事を勉強して頂きたいと思っております。あとでこの世界の書物をご用意しますので、しっかり学んでください」

「あ、はい。わかりました」


 突然の発言に対して今日も今日とて素敵な笑顔で言うツバサさんに、私は拒否することが出来なかった。

 あー、勉強か。学生の頃苦手だったんだよな勉強。テストもイマイチの点数ばっかり叩き出してたし。社会人になって毎日が勉強みたいなものだったけど、それとこれとは違うというか。

 まぁもとより本を読む事は嫌いではない。だが果たして私にこの世界の本を読む事ができるのだろうか。

 言葉は通じるから大丈夫だと思っていたが、この世界の文字はまだ目にしていない。

 不安な私を他所に、メイドたちに本は私の部屋に運ぶ様に言っておいた、とツバサさんは言った。

 じゃあ部屋に戻ったら、何冊か本があるという訳か。どうなるかは分らないが、部屋に戻ったら読んでみよう。


「では食事をいただきましょうか」


 またもいつの間にか現れたレオナさんたちが、朝食を昨日と同じ様にテーブルに並べていく。

 目の前に並べられたのは、白米にみそ汁、焼き魚、やっぱり和食でしたか。

 ツバサさんとセイゴさん手を合わせてから箸を器用に持ち、食べ始めた。

 箸もあんなにキレイに使えるとは。和食が本当に好きなんだろうな。

 私も、二人と同じ様に手を合わせてから朝食を口に運ぶ。

 うん、おいしい。


「ツバサ、俺はいつも通りの所にいるから」

「わかった。昼になったら呼びにいく」


 いつの間に食べ終わったのか、セイゴさんは頬に米粒を一つ付けたまま、さっさと部屋を出て行ってしまった。

 頬に米粒って、本当に気付いていないのかあれ。

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