第二十話 ひと段落

 そんな話をしながら私たちは食事をした。

 とっても美味しいお寿司だった。

 魚が新鮮そのものだった。海が近くにあるからなのか、あんなに美味しいお寿司を食べたのは久しぶりだよ。

 食事の後、ツバサさんが私のために用意してくれたという部屋へと案内してくれた。

 案内された部屋のドアを開けると、目の前に襖が現れる。

 ドアを開けると襖? え、なんで襖があるの?

 何かが可笑しいと思っている私をよそに、ツバサさんは襖を開けた。

 そこには十二畳はあるかと思うくらいのとても広い和室。続きの間には布団がしいてある。そして目の前の開け放った障子の向こうに見えるのは、湯気を上げているまさかの露天風呂。露天風呂の大きさも明らか一人用ではない。かなり広いし、その向こうの景色もとてもよさそうだ。


「日本文化に理解がある貴女様にはこちらの部屋の方が落ちつけるのではと思いまして」


 いや、私が一人暮らししていたのは六畳一間でベットでした。

 こんなに広いと逆に落ち着かないよ。これじゃあまるで高級旅館じゃないですか。

 私が一人暮らししていた部屋より何倍も広い、間違いなく、何畳あるかはかりたくなるくらいだ。


「この部屋は自由にお使いになられてよろしいので、どうぞ今日はゆっくりとお休みくださいませ」

「ほ、本当にこんな立派な部屋使ってもいいんですか?」

「もちろんです。こちらはお客様が宿泊なさる為の部屋ですから」

「気が引けるというか、なんといいますか」

「貴女様、いえ、お名前でおよびさせていただきますが、綾様にはこれからしていただくことがあるはずです。その分と言ってはなんですが、この位の事はさせていただきたいです」


 ツバサさんは、眉を下げて申し訳なさそうな顔を見せた。

 そう、私は何か彼らに協力をしなければならないのだ。具体的に何をやれば良いのか分らないが、きっと大変なことなんだろう。そう思っておく。

 それでは、とツバサさんは私に一礼をして部屋から出て行った。

 一人きりになった部屋をみて、私はやっと緊張が解ける。

 あー、なんか色々ありすぎて頭の整理がつかない。

 まさかの異世界に来て、なんか頼まれて、動物に出会ってイケメンに出会って……。

 出来事を頭の中で整理しようと、空を見ると、いつの間にか陽が落ちていた。

 暗くなり始めた空には、キラキラと輝きを放ち始めた無数の星の姿が見える。日本じゃまず見られない光景だよね。

 キレイな夜空を見ていたら何故かうとうととし始めて来て、限界を感じた私はベットへとダイブをした。


「無理だ。今日は、もう、何も、考えられない……」


 疲労困憊のせいか、私はすぐに眠ってしまった。

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