第十七話 改めまして

 お城の中は外壁のあのくたびれている姿とは打って変わって、とても綺麗だった。そこはまるでどこかの王宮のようだった。汚れ一つない真っ白な壁に、磨かれた柱、あと窓ガラスもピカピカだ。天井にはシャンデリアがいくつも下がっててつい、こんなにいらないだろうとツッコミを入れた。もちろん心の中で。

 城に入って最初に連れて行かれたのは、とても広く大きな部屋。

 周りは巨大な窓に囲まれていて、そこから外の綺麗な風景がよく見える。

 ここは食事とかをする所なのだろうか、軽く十人は座れるであろう木製の長いテーブルと椅子が中央にあった。

 ツバサさんがテーブルの中央より奥の席のイスを引く。


「貴方様はこちらの席におかけください」


 笑顔のツバサさんに促されて、私はそこへ向かって歩き、恐る恐るその椅子に座った。

 そしてツバサさんとセイゴさんもテーブルに向かって歩き私の目の前の、いつも座っているらしい席についた。

 だが、奥の席が空いている。確か、奥の席には一番偉い人が座るんだったよね。ということは、やはり二人の他にもっと偉い人がいるという事か。

 二人を目の前にして座っているのは、本当に面接みたいな状況だ。空気がとても重いのも、あの時のようだ。


「まずは、私たちの自己紹介からしましょう。まだ名乗っていませんでしたね。私の名は、ツバサ・ヴィントと申します。そして彼が」

「セイゴ・シュターンだ」


 胸に手を当てながらとても礼儀正しく名を教えてくれるツバサさんに対して、セイゴさんは渋々といった顔で教えてくれた。

 それからツバサさんは笑顔のまま、こちらの世界とこの村の話を、私に分りやすく説明してくれた。

 ここは自然と共存をしている世界。私が今いる村の名は『スパーロ』というらしい。

 こちらの世界は、ほとんど私が住んでいた世界と大差はないようだ。

 大きな違いと言えば、国や村にそれぞれ守り神と崇められている『神獣』がいて、その神獣のおかげで人々は生活ができていると考えていることだ。

 雨が降るのもその神獣のおかげ、農作物が豊かなのも神獣のおかげ……という訳だ。昔、私たちの祖先が自然を神と崇めていたのと同じようなものだろう。

 ここ、スパーロの神獣は門に描かれていた二匹のドラゴンだそうで、私がこの世界に来た時にいた国は『アォウル国』といい、神獣は真っ白なフクロウらしい。

 ちなみにさっき通った門が、この村とその国を繋ぐ唯一の場所らしい。

 スパーロは独立している村で、どこの国の領土にもなっていない。

 この村は独自の文化で生活をしているので、他国との違いが多々あるらしい。なので大昔から暗黙の了解で、他国はスパーロを自分の領土にしようとは思わなかったようだ。


「それでも、危なくなった事ぐらいはあるのでは?」

「この村の出身者は皆、特別なのです」

「特別?」

「村で生まれた者は全員、何らかの才能に目覚めます。もっとも多いのは、肉体を駆使して戦いに挑む、武術や剣術が優れている者ですかね。その様な人達が相手では、一般の兵士たちは戦う気など起き無いようです。まぁ、そんな才能を持った者は、他国へ移り住む人が多いですが。その者たちはそこで大いに活躍をしていると話は聞いています。優秀な人材が増えるのは、他国にとってもありがたい事だと思っているようです。それに、我々の村は農作物にも恵まれていまして、多く収穫された分はアォウル国の民に売りにいっています。他国に比べ、ここの農作物は新鮮で美味しいと評判なので」


 ツバサさんは最後に、とても良い村ですので安心してください。と付けたした。

 なんか、安全なのか安全じゃないのかよくわからない。

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