第十六話 いざ、中へ

 賑やかな動物たちがいなくなって、とても寂しくて、不安だ。

 緊張する。まるで初めて面接会場に向かうみたいだ。

 心臓が鳴る音と、背中に流れる汗を気にしながらツバサさんと共に少し歩くと、いきなり壁が途切れ、開かれた巨大な門が姿を現した。


「わお」

「ここが村と森とを繋ぐ、唯一の門になります」


 上を見上げるとやっと一番上が見えるくらいに大きい石造りの門は、左右に二匹の西洋のドラゴンの彫刻がまるで門を守るかの様に飾ってある。

 白のドラゴンと、黒のドラゴン。よく見たら、黒のドラゴンの方には目が六つもついているようだ。ちょっとコレは怖い。


「丁度閉門の時間なので閉めなければなりません。急いで中にお入りください」


 笑顔のツバサさんに言われて、立ち止まっていた私は慌てて門を通り抜けた。

 大きく開いている門に一歩足を踏み入れて驚いた。

 この門は随分高いところに建っているらしい。目下に広がる緑の大地。そこにはとても澄んでいそうな川が流れ、所々に民家が見える。密集しているところもあるから、きっとあそこが小さな町なのだろう。左手にはお城があり、右手には巨大な山がそびえている。そしてその大地の先には雄大な海が広がっていた。

 この風景、すごすぎる。

 門の目の前には三本の道があり、海へ下っていく道と、右の山へ向かう道。それからお城へ続く道だ。その城は大きくて立派だけれどここからでも分るくらい外壁が壊れている。きっと昔のお城なんだろうな、多分村の観光の目玉をして使うんだろうね。


「私たちの住んでいる場所はこの先にあります。そこでお話がすみましたら、ご飯にしましょう」


 閉門をいつの間にか終えたツバサさんは、そう言ってある道の先を指差した。

 それは、左の城へ向かう道。見ると、その道を悠々とセイゴさんが城に向かって歩いていた。

 何となくえらい人なんだろうなとは思っていたが、まさか、お城に住んでいるとは……ある意味凄い。

 セイゴさんたちを雇っている城主がどんな方なのか気になり始めながら、私はツバサさんと城へ向かう道を歩き出した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る