第十四話 もう一人いました
「セイゴ、見張りの時間が過ぎたので戻りますよ」
透き通るような声が、聞こえた。
高めのその声は、聞くだけでなぜか心が癒されるような感覚がした。
私は思った。まだ顔を見てないけど、確実に美人だと。
「ツバサ」
セイゴさんのその人を呼ぶ声に反応して、私は声が聞こえた方を向く。
漆黒に染まる長い髪は天使の輪が見えるほど艶やかで、首の後ろで一つにまとめられた髪は、サラサラと風に揺れている。
顔の輪郭も滑らかで、肌も雪の様に白い。涼しげな目元に長い睫毛、まるで紫水晶の様に輝く瞳。
体はしなやかで、セイゴさんと同じ服装をしている。
彫刻家が作った女神像と言われれば、そうだと答えそうな美貌の方がそこにはいた。
空いた口が塞がらない。なんて美しいんだ。まず男性か女性かの判断さえ難しい。多分男性、名前的に多分男性。とりあえず男性ということにしておこう。女性だったら本当にごめんなさい。
呆然とツバサと呼ばれた人を見続けていると。彼は、私の存在に気付いたのかジッと見詰めたかと思うとふわりと微笑んだ。
その微笑みに、私の心臓は高鳴る。なんて破壊力だ、心臓がもつのか不安になってきた。
「貴方は異世界の方ですね。ようこそ、こちらの世界へ」
「え、なんでその事を……」
「私はその人を見れば、どこの出身の者か判断できる目を持っています。だからわかったのです」
ツバサさんはなんて凄い目を持っていらっしゃるのでしょうか。
なんか、嘘も見抜けそうで怖いね。だからセイゴさんは、嘘偽り無くとか言ったのだろうか。
「では詳しい話は、門の中に入ってからお話しをしましょう。セイゴ、良いですね?」
「好きにすればいい」
そういうとセイゴさんは壁の方に向かって歩いていった。
素っ気ないのは、私に対してだけじゃないのか。
「ではお嬢様、どうぞ」
そう言って、笑顔で私に向かって手を差し出すツバサさん。まるでどこかの王子様がのようだ。
こんなの本の中でしか見た事無いよ。
スズメさんといい、ツバサさんといい、なんだこの世界は、イケメンばっかりか。あ、おじさんもいた、忘れてた。
ずっとドゥフトさんに乗りっぱなしだった私。流石に降りないと、そろそろ申し訳ない。
差し出されたツバサさんの手を恐る恐るとると、フワリと暖かい風が私を包み込んで、ゆっくりと持ち上げるとドゥフトさんから降ろしてくれた。
おお、なんてファンタジー……。
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