第十三話 喋る動物と門番

「ほらほらセイゴ、そんな怖い目をしていたらダメだよー! 答えられる物も答えられなくなっちゃうからさー!」

「うるせぇドゥフト、俺は元からこんな目つきだ」

「ほら、綾ちゃんも一度深呼吸してから話しなよ。そしたらきっと答えられるから!」


 青年の名前はセイゴさんっていうのか。動物たちはみんな外国の名前っぽいけど、人間はどちらかというと日本語っぽい名前が多いのかな。

 そのセイゴさんと仲がいいのか、ドゥフトさんは青年のオレンジ色の髪の毛を口で食みながら話しかけてくる。あれ、髪がべちゃべちゃになってるだろうな。

 助け舟を出してくれたドゥフトさん。そうだ、今はちゃんと返答をしなければ前に進めない。

 ドゥフトさんに言われた様に深呼吸をして、私は心を落ち着かせた。


「わ、私は御手洗綾と言います。とある人に村に行く様に言われまして、森を歩いてきました」

「へぇ、礼儀は知っているみたいだな」


 セイゴさんは持っていた大剣を背おっていた鞘に軽々と納め、ちょっと眉を下げる。

 眉間の皺は消えたようだ。よかった。

 安堵で体の力を抜きそうになったが、今はまだ気が抜けない状況だという事に気づき、緊張だけは解かないことにした。

 強ばっていると、セイゴさんの肩にシュタインさんが飛んで行く。どうやら私の事を説明してくれるらしい。


「御手洗は、村にいる彼らに協力してくれと言われて来たらしい」

「……シュタイン、お前が聞いた村にいる彼らっていうのは、まさか俺たちの事を指しているんじゃないだろうな」

「俺はそう考えた。だから俺たちで、お前がいるここまで案内したんだ。現在、村の中でそんな人物は他には考えられないからな」

「余計なお世話だ」

「お前もそろそろ考えるべきだろう、色々とな」


 なにかを問いかけているような目をしているシュタインさんの言葉に、セイゴさんは小さくチッと舌打ちをした。

 仲が良さそうだけど、なんか微妙な空気。やっぱりこの人が、シュタインさんが言っていた問題児で間違いなさそうだ。


「じゃあツバサを呼んで! セイゴじゃ心配で仕方ないし!」

「なんだと?」

「セイゴは口が悪いからね、もう一人に色々と任せた方が良いよ」

「ドゥフトてめぇ」

「綾ちゃーん、セイゴが怖いよー!」


 私に振らないで! どう答えれば良いかわからないから!

 焦っている私に対して、ニヤニヤと笑っているドゥフトさんの顔が見えた。

 この顔、斉藤さんだ! そうだ、あの人、私がからかわれていると一緒になってからかう人だった! 忘れてた!

 チクショウ。あの人にも私逆らえないから、なにを言われても反論できないんだよ!


「おい、御手洗とか言ったか?」

「あ、はい!」


 ドゥフトさんを全力で睨んでいると、セイゴさんがいきなり話しかけてきた。

 変な顔を見られたかもしれない。出来ればイケメンの方々には、変な顔をしている所は見せたくなかったのに。


「何か聞かれたら、嘘偽り無く話せ。そうすれば衣食住は保証してやる」


 なんか悪人に脅されているような台詞に聞こえるけど、ここは大人しく従っておくのが正解だろう。

 私は静かに首を縦に振った。

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