第6話

私はカーディガンのポケットからスマートフォンを取り出すと

『お気に入り』のフォルダから薔薇の苗木を取り扱うサイトを呼び出した。

ここは、数ある通販会社の中でも飛び抜けて品揃えが良く、配達の対応も

早いので度々利用している、まさに”お気に入り”のショップだ。

検索欄に『夢乙女』と入力し実行を押す。

目当ての頁はすぐに表示された。

画面いっぱいに、微笑みかけるような可憐な夢乙女の姿が映し出される。

私は夢乙女の画像と、目の前の緩やかな眠りに身をゆだねている【夢乙女】を

見比べ頷いた。


間違いない。やはり彼女は私の夢乙女だ。

改めて確信した。


早速注文画面に進み、ひと苗購入する。

折り返しのメールが、明日の午後到着予定だと告げた。

相変わらず、素早い対応だ。

そうとなれば、のんびりしてはいられない。

直ぐに準備に取り掛からなければ―――――


これから行わなければならない重労働を思うと、少しだけ憂鬱になるが…

それも、美しい花を愛でるための苦労と我が身を励ます。


私は華奢な夢乙女の身体を抱き上げた。

そのまま、廊下の突き当りにある、以前は執事バトラー室として

使用していた部屋へと運ぶ。

簡素な寝台で申し訳ないが、の褥と我慢してもらおう。

不意に寝返りを打った彼女が、クスリと笑った。

楽しい夢でも見ているのだろうか?

願わくば、女優として成功を収めた夢であって欲しいものだ。



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