第6話、『 アホ 』になる為には

 まず、経験して頂きたい事があります。

 そんなに難しい事ではありません。 機会が無い訳でもありません。

 ただ、言えるのは、今まで考えた事も無かった経験です。


 代表者になろう!


 ・・ナニそれ?

 ほとんどの方が、そう思うでしょう。

「 そもそも、代表者って、ナニ? 」

 別に、先生とか講師とかになれ、ってんじゃありません。

 勿論、会社組織の役員でもありません。 第一、そんなん、よほどの機会に恵まれない限り、なれっこ無いですよね・・・?


 一番、良いのは、趣味で参加しているサークルの代表者です。

 つまり、指導者とか、会長・団長と言った、長たる者。 副会長などと言った、No・2でも結構です。


 この『 代表者 』と呼ばれる役職に適しているのは、イメージとしては『 優等生 』です。 まあ、ほとんどの場合、会員や団員たちからの他薦で、優秀と思われる人が役に就いています。

 この『 優等生 』、非常に優秀であれば、問題は無いでしょう。

 ヤバイのは、『 適度に 』優秀な人。 つまり、そこそこにアタマの良い人は、時にして同じ役員の人や会員・団員たちから不評を買う事が多いのです。

 ヘタに学がある為、不測の事態勃発に対し、メールでの炎上・まずい発言など、他人の気持ち・立ち位置などが充分に理解出来ず、見解が総意と異なったりします。 いわゆる『 上から目線 』が、原因の第1です。 これは、本人も気付いていない事がほとんど。


 さて、代表者と言う役職は、往々にして対人業務が多く、面倒なもの。 たいていの人は、嫌がり、推挙の話があっても、ご辞退申し上げる人が多いものです。

 これを、自分から『 立候補 』してみるのです。

 勿論、イキナリ立候補では、それこそ『 アホか? 』となるでしょうから、まずは状況調査です。

 適任者が無く、役員の人たちが悩んでいる時・・ 小声で窺ってみましょう。

「 ・・あの、私では、ダメでしょうか・・・? 」

 役員たちの、怪訝そうな視線に負けず、次なる発言です。

「 私などでも宜しければ、頑張ってみたいと思います。 勿論、経験豊かな皆さんのご助言、ご指導があっての事だと思いますので、その辺りのフォローを宜しくお願いしたいところですが・・・ 」

 こう切り出せば、決定的な問題がある以外は、たいていが了承されます。


 サークル活動においては、様々な人たちが集い、活動しています。 完璧に決められたスケジュールに関しては、その通りに実行出来ない人も存在するワケで・・・

 つまりは、スケジュールやルール、行動内容に、ある程度の『 余裕 』が欲しいのです。

 『 優等生 』には、人道的視野に立っての活動主旨が提案出来ない・・ とは言いません。 むしろ、社会的弱者の立場に立ち、細やかな提案・配慮を施すものと推察出来ます。

 しかし、前章でも触れた事柄ですが、『 想定外 』の事が現実となった場合、優等生は、そういった事態についての対処には、意外にも不向きであると言う事実を、言動と共に露呈させる事が多いのです。


 ここで、『 アホ 』の出番なのです。

 『 アホ 』は、とにかく事態を収拾しようと、必死に努力します。

 責任転嫁や原因追求と言った、いわゆる『 保身 』に走る事無く、とにかく事態の打開に奔走します。 これは、他人から見れば、とにかく責任を全うしているように映り、同情すら誘う事になるでしょう。


 『 アホ 』は、正直ですから・・・


 自分を繕う、その手段すら考えるキャパも無い為、とにかく、何事に対しても一生懸命です。

 大切なのは、ココなのです。

 『 アホ 』になる為には、物事に対して純粋でなければなりません。

 楽をしようとか、儲けてやろうなどと言った、腹黒い思想は払拭しなくてはならないのです。

 元々、そんな考えすら持ち合わせていないのが『 アホ 』ですが・・・


 純粋に職務を全うする姿は、まさに『 長 』たる者の姿です。

 皆を牽引して行く者に必要な業務は、皆に『 言う事を聞かせる 』・『 ルールを作る 』と言ったハード的な事ではなく、皆を『 まとめる 』と言う、メンタルな部分に相当する業務なのです。 『 アホ 』は、意外にも、そう言った職務に向いています。 余計な事を考えず、本筋に正直ですから・・・


 この『 正直 』さが、何事にも勝る、『 アホ 』の長所です。


 損得抜きで、決められた目標に向い、一直線。

 我が身を惜しまず、職務に対応する姿は、誰の目にも美しく留まる事でしょう。


 これなのです。

 こう言った経験を、是非、経験して欲しいのです。


 やれば、出来る・・!

 大きな自信となる事、間違い無いでしょう。

 地位も無く、バックアップも無い。 さしたる学も無ければ、ヒトに見せられる特技も無い・・・

 しかし、正直に努力すれば、大勢の人たちから、大いなる信頼を得る事が出来るのです。 ひとつの団体の『 長 』として、他人から認知もされます。 それは、決して、お金では買えません。 人と、人との信頼から得る、大きな報酬なのです。

 

 ・・さて、その後です。


 前章でも触れました通り、『 夢 』を見ようではありませんか・・・!


 まあ、サークル活動の中での話ですので、『 アホ 』特有の考え( 無謀とも言える提案 )は、周りの常識的な方たちからストップが掛かる事でしょうから、ご心配なく。

 微妙に、可能性のある『 突拍子的提案 』は、意外に人目を引くものです。

「 なるほど・・! そんな考えも、結構、アリかも・・! 」

 『 アホ視点 』は、常識ある方たちにしてみれば、奇策と映る事が多いのです。

 うまくいけば、こんな痛快な事は無いでしょう。 あなたも、周りの方たちも・・・


 さあ、一歩、踏み出してみましょう!

 失敗しても、大丈夫。 皆が支持してくれた案です。 責任は、皆にあり、あなた1人が負わなければならない事はありません。 まあ、発案者として、ある程度の責任はあるでしょうが、あなたを責めるヒトは少ない事でしょうね。


 代表者をやってみる。

 意外な事だったかもしれませんが、正直を通せば、必ず出来ます・・・!

 『 アホ 』なりの歩幅で構いません。 1歩、踏み出してみましょう。

 新たなる世界が展開する事、間違いありませんよ?


 さて、次回は、『 アホの未来 』をお送り致します。

 ご清聴、ありがとうございました。

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