第4話 胡桃の木の花

 川沿いの砂地を過ぎると、散歩道はいったん川岸から離れて、今度は草の生い茂った土手の上へと進んでいきます。


 よく晴れた日に、青い空へと続く道を進むのはとても気持ち良いもの、

 登った土手の1番高い斜面には、背もたれも手摺りもない平らなベンチが一つあります。


 靴下の上まで伸びた草を足に感じながら、物思いにふけったり、ふと思いついたことをノートに書いたり、生きていくにはそんな時間も必要です。

 

 このベンチから、今度は土手を下る散歩道の途中に、広瀬川の河原ではよく見かける胡桃くるみの木が1本ぽつんとあります。


「胡桃の木の花って、見たことあるでしょうか?」


 春の初め、真っ先に緑をもたらす木の一つである胡桃の木は、葉を枝から鳥の羽の様に広げると、薄緑色の花を垂らし始めます。


 葉の影に隠れて、また葉よりも薄い色なので最初は気づかないのですが、だんだんと長く、海ぶどうが沢山実っているように。


 しかしその花が地面に落ちると、何となくそれは動き出しそうなのです。ワサワサとした緑色の生き物として、始めは数匹だったのが、日毎に仲間を呼び集めて。


 私の母は、何故かその花が気に入ったのか、2、3匹家に連れ帰り、白い紙の上に置いて写真に撮っていましたが、私は苦手で、その時期はそこを避けるようにしています。


 雨が降ったりすれば、それは萎んで黒く脇にそれていくので、気にして歩かなければならないのは一週間ぐらいですかね。


(追記)

 母が持ち帰った、胡桃の花ですが、何となくこれを動かしたらどうなるか考えました。

 ちょっとずつ動かして写真に撮ってアニメーションにしてみましたが、毛虫のようにも、他の違うものにもならず、フルフルと奇妙な動きをするだけでした。






 

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