第12話あなたへ

二度もあなたが私を呼んだのはなぜですか。あなたの中に深く抱かれて、あなたの奥底にあるお宮で婚姻の儀を遂げられたなら、私は海月となって溶けてしまってもかまわない。未婚の身を欲するあなたは、かつてふるさとに大波をもたらし、数多の乙女たちをその身体に抱いたのではありませんか。歴史の波に攫われていった彼女らの末裔として私は生まれ、そしてあなたのやさしい腕の中で死にゆく定めと知りながら、今は疫病で荒廃した都のはずれに住まい、波の音をサブスクリプションで聴いてはるかなあなたに想いを馳せるばかりです。水に還りたい、とつぶやいた少女の頃から、あなたの呪縛から逃れられずに、今なお水の音が響く夜を待ちわびています。

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