第9話 泥沼
鋼の双腕が稲妻を纏い振り回される。灰色をした装甲とブルドッグのマーキングが特徴的なネメア・アーマーに全身を包んだスパイクがそれを受け止める。
スパイクはスーツの持つアシスト機能をフル活用し、ブースターたる機能”オンスロートモード”を起動させることで、怪力のウォーヘッドと同等の力を得る。
ウォーヘッドの押し受ける拳を受け止めるスパイクの力は均衡し膠着状態に陥るが、そこに同じくオンスロートを発動したスタンが追撃し、まずはウォーヘッドの膝裏を蹴り膝を着かせる。
こうすることで膠着状態が解かれ、跪いたウォーヘッドの顔面へとスパイクとスタンの拳のフルスイングが命中、彼は大きく仰け反るものの、二人の追撃を何とか凌ぐ。
「パパ……ッ」
「ぷーぷー! お嬢ちゃん、余所見は危ないぜ」
危機に陥ったウォーヘッドへと意識を向けたミュールは彼を救うべく魔法を行使しようとする。だがそこへとイヨが背負ったジェットパックで接近し、その手にしたハンドブラスターを彼女へと突き付け、事も無げに引き鉄をその指の肉球で絞る。
イヨの相棒である科学者にして発明家、”マッド・ドク”の異名を持つイカレチワワ、マッド・ドク・ドッグ”レオン”が発明したブラスターシリーズは惜しみなく使われた核燃料と特殊エネルギー流体の反応によりハンドガンサイズであっても対象を瞬く間に蒸発させ得る威力を持つ。
放たれた閃光は、しかし少女に命中する寸前で停止し、ブラスターの銃口から放たれた状態で固まってしまう。
「あん? くそ、どうなってやがる。動かねえ!!」
「あっち、いってよ!!」
「おえ!? み゛ゃあああん!!?」
ミュールの叫び声は魔力の衝撃を伴い、ブラスターの閃光を掻き消し、イヨを吹き飛ばした。
そして彼女はウォーヘッドの元へと急行し、彼と殴り合いを繰り広げている二人との間に飛び込む。ウォーヘッドを押していた二人は彼女の登場に一瞬動きが鈍る。
まずミュールの放った衝撃波がスタンを弾き飛ばし、動揺したスパイクは体勢を立て直したウォーヘッドの不意打ちを受けて投げ飛ばされてしまう。
「くそ、また振り出しだ」
「――いや、任せておけ」
起き上がったスパイクはぐらぐら揺れる頭を振り回しながら押し切れないもどかしさに悪態を吐く。しかしそんな彼のすぐ脇をのしりのしりとこれの身長ほどもある脚が歩いて行った。
修理を終え、セブンズが搭乗したタンクマンが再び立ち上がった。
「パパ、おおきいのが来るわ……」
「ミュール……」
「何、パパ? どうかして?」
「……いや」
ウォーヘッドは何か気にしているようであったが、それが何かは彼しか知らない事であり。五本の指の様なアンカー付きの足で地面を踏み締めるタンクマンを前に二人は身構えた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます