第7話 ニューヨーク
「――ここは、ニューヨーク……!?」
門が開いた場所。廃墟から一転して広がる青空に移り込んだものはエンパイアステートビル。
意図せぬスカイダイビングに悲鳴を上げるのは高所を苦手と語るスタン。スパイクとナタリアはすぐさまスーツに備わったスラスターとバーニアを点火し姿勢制御を行う。飛行は出来ないが、落下の速度を落とそうとしていた。
「スパイク、あの二人は――居た」
「飛べんのかあいつら!? きたねえぞ……!」
タンクマンに登場したまま落下するセブンズは、同じように機体のスラスター及びバーニアによる制御で機体の姿勢を安定させながらミュールとウォーヘッドの二人を探すと、オメガ・チームよりも下方にその存在を確認する。
ミュールを抱えたウォーヘッドを包む彼女のサイクフィールドが翼の様に広がり、揚力を得ずとも彼女たちは空を飛んだ。そして徐々に高度を下げ、やがて二人はニューヨークの大地を踏む。そこはタイムズスクエア。
交差点を行き交う大勢の人々は慌てふためく者と、遠巻きに交差点の中央に降り立った少女を肩に乗せるシルバーの大男に携帯のレンズを向けたがる者とで分かれる。
「……わたしここキライよ、パパ。人が、たくさんすぎるもの」
ウォーヘッドの首にしがみ付いたミュールはそう言い、嫌そうな目を周囲の人々に向け、ウォーヘッドもまた未知の環境に動揺しぐるりと周囲を見渡していた。
すると上空からタンクマンが落下してきて、交差点に大きな穴を作った。巻き上がる土煙の中を、所々スパークを起こしたタンクマンがぎくしゃくした動きで這い出てきて、腕に抱えたオメガ・チームの面々を解放する。
「死ぬかと思ったぜ……皆、生きてるよな?」
死んだ方がマシとスタンが愚痴を溢し、真面目なナタリアは素直に生存を報告。残るセブンズもタンクマンの装甲ハッチを展開して機体から元気な姿をスパイクに見せた。
「パパ、あの人たちはわたしたちをいじめたのよ。悪い人はお仕置きをして、こらしめないと」
「ミュール、君がそれを望むのなら……」
がんがんとウォーヘッドが拳を打ち鳴らす度に金属的な音が響き渡り、周辺の民間人にヘルメットのスピーカーを使って避難を勧告したスパイクとセブンズ、スタンがそれに対峙する。
「ナタリア、タンクマンの復旧はどれくらい掛かりそうだ」
「十分てところかしら……」
「五分で頼む。時間は俺たちが稼ぐから……行くぜ、セブンズ、スタン」
ナタリアのみ故障したタンクマンの修理に当たり、三人はそれぞれ拳を構えてウォーヘッドとミュールのコンビに立ち向かう。
左右に立ち並んだ二人を見てスパイクはふとした疑問を投げ掛ける。
「……お前ら、銃は?」
「落とした」
「――ま、昔ながらが一番だな」
セブンズとスタンは同時に答え、拳を握り直しながら溜め息を吐くスパイク。ウォーヘッドの雄叫びが第二ラウンドの開始を告げた。
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