第5話 オーバーサイクフューリー
ウォーヘッドの肩に座ったミュールは自らと彼を覆う魔力の膜"サイクフィールド"を展開し、ただでさえ頑強なウォーヘッドは魔法に対しても耐性を得ていた。
ミュールの母、ベアトリクスの魔法は強力だが、どうしてもミュールのそのサイクフィールドを突破できない。理由は分かっていた。
(ちっ……あの大男。娘の魔力を増幅しているのね。まさか隕石があんなものだとは……仕方ないわね)
ベアトリクスの体が黒い霧に変わり、ウォーヘッドの拳は彼女をすり抜けた。変わりに後ろにいたギャングの一人が哀れにも拳の犠牲となり、ひしゃげて吹き飛んだ。
再び実体化したベアトリクスは中に浮き、特異点を頭上に生み出した。漆黒の球体はあらゆるものを引き寄せ、飲み込もうとする。
「ミュール、掴まっていろ」
「うん、分かったわ、パパ」
肩からミュールを下ろし、片腕の中に彼女を抱き抱えたウォーヘッドは両足をアスファルトの地面にめり込ませ、残る片腕も地面に突き刺し自らを固定し引き寄せから逃れようとする。
「ヤベヤベヤベ! スタン! セブンズ! ナタリア、掴まれ! ノヴァ、タンクマンを届けてくれ、今すぐに!!」
セブンズとスタンがそれぞれアスファルトへと指を引っ掛け、掴み損ねて浮き上がったスパイクを掴まえる。そのスパイクはナタリアを掴まえて、必死に特異点へ吸い込まれる事へ抗っていた。
しかし抗う術を持たないギャングたちは次々と特異点へと引き寄せられて行き、しかしその寸前で止まり、彼らはベアトリクスにより集められていたのだった。
「目には目を歯には歯を、増幅には、増幅よ」
直後、特異点は消失し、吸引も止むものの、集められた数多のギャングたちは浮かび上がったベアトリクスの頭上に引き寄せられ、一纏めにされ、潰され混ざり、肉団子と化した。
ベアトリクスはそれを更に圧縮し続け、一粒程度にまで小さくするとそれを口へと放り込み飲み込む。その実、ギャングたちはまだ生きていて、ベアトリクスは彼らの命を食すことで己の魔力へと変換した。
ベアトリクスはどす黒いオーラを纏い、増幅された魔力はミュールと同じ彼女の白髪を逆立て、眼光からすら光として溢れ出していた。これを”オーバーサイクフューリー”と言い、今のベアトリクスは上位者に等しい力を行使出来る。
「ミュー……お仕置きが必要なようね」
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