第四章 対魔法騎士団 第三話 ヴィーラム対魔法騎士団

静まり返る森

「ともかく、ヴィーリームに向かおう。ここで立ち止まってもなんの解決にもならん」

アラムスはそう言うと、座っている倒木から立ち上がり、

リークの肩を叩く。

「そうだね、今世界で......人間達の間で何が起きてるのかも調べる必要があるし」

そう答えると、リークも立ち上がりみんなの顔を見回す。

レーネとシルファも倒木から立ち上がると無言で頷く。

「私も同行しよう。さっきの集団がどこかに潜んでいるやもしれんからの」

ルーシュは小屋から出てきて、リークの前にたつ。

「師匠、中には何も?」

僕がそう聞くと、ルーシュは目を閉じると無言で頷いた。

「そうですか......ジーロの石はアラムスに持たせましょう」

「任せておけ」

そう言うとアラムスは、ジーロの石を腰に縛り付けている革袋に納めた。

「さぁ行こう。みんな十分に注意してくれ」

僕はそう言うと、森を抜けるべくきた道を歩き出し

四人も後に続いた。

鉱山道に出て、ひたすら歩き進んでいく。

周りは依然として静まり返っている。

襲ってくる気配もない。

「仕掛けてこないな。

ヴィーリームに引き返しているとなると、城門で待ち伏せか......。

下手をすれば攻城戦になるぞ」

アラムス険しい顔でリークを見る。

僕は前を見たまま歩きながら

「そうかもしれない、けど城を危険にさらすよりもっと早い段階で攻撃を仕掛けてくると思うんだ」

「なるほどな......となると森を抜けた場所か......」

アラムスはそう言いながら考え込む。

「敵は大勢でくるであろうな。

小僧のあれを見たんじゃ、ただでは済まんことをしかと目に焼き付けておるからの」

ルーシュが後ろでそう言うと、

「まともに進んでいってはダメ......ってことよね」

シルファが後ろで呟く。

話ながら進んでいると、関門から続く道との合流点にたどり着いた。

人が歩いている様子もない。

「誰もいないな、通行止めにでもしているのか」

アラムスがそう言うと先頭に出て合流点を通過する。

「ヴィーリームはこっちだ」

アラムスを先頭に森を進んでいくと、森の出口が見えてきた。

出口が近づいてくると広い草原が見え、そのはるか向こうに城門が見える。

「小僧。出口の左に十八、右に十四人じゃ」

ルーシュがリークの隣にくると

「私は左を、小僧は右をやれ」

そう言うと道から左側の森に入っていく

「三人はこのままアラムスを先頭に進んでくれ」

そう言うと僕も右方向の森に入る。

森の中を進んでいくと、前方に魔力を向ける。

確かに十四人

まとめて一撃で片付けるか。

離れている今は、仲間を巻き込まないだろう。

「我が身に宿りし光の力、その光は時を超える。全てを穿て」

前方に両手をかざし、十四人全員に的を絞ると魔力を放つ。

そのまま走り続け、森を突き抜けると草原に飛び出す。

すかさず左方向を向くと、ルーシュが十人を吹き飛ばしているところだった。

「水よ爆ぜよ」

轟音とともに水蒸気が爆発する。

残りの八人はなかなかの反応速度で、

魔法が放たれる前に飛び退いていた。

アラムスが鉱山道から出てきて、

八人のうちの二人を斧でひと薙ぎにする。

「おうぅぅらぁああ」

横一閃に切り捨て、斧を前方に構え直す。

全員が合流し、残りの六人と対峙する。

「やはり桁違いな魔法だな。

賢者に勝るとも劣らないその魔力。

その魔女を先に始末するぞ」

真ん中のリーダー格の男が言うと、

「いやまて、右側の隊が消滅しているぞ」

一番右に立つ男がそう言うと、リーダー格の男はリークを見る。

「なんだと!何が起きた!」

一番左の男が口を開く、

「さっきの魔法といい、その男の魔法は底知れん。

メリアの石を使え」

そう言うと六人は、腰の革袋から石を取り出すと

リークとルーシュに向けた。

リークの魔力が乱れ、操れなくなった。

ルーシュもまた同じく、険しい顔で距離をとる。

騎士の一人がルーシュに飛びかかり剣で斬りかかる。

ルーシュに剣の切っ先が近づく


......やめろ

......僕の師匠に

「許さん」

無意識にそう呟き騎士の一人をリークの鋭い眼光が捉えた瞬間

しゅばっ

という音とともに騎士の姿は消え去った。

「小僧!目を閉じよ!」

ルーシュが叫ぶと同時に僕は目を閉じる。

「ちっ、下がるぞ!」

そう言うとリーダー格の男が何かを投げつける。

「閃光爆弾だ!目を塞げ!」

アラムスが叫ぶと、ルーシュ、シルファ、レーネ、アラムスは目を塞ぐ。

閃光爆弾が爆発する瞬間、リークは鋭い眼光で五人を捉える。

僕の背中に誰かの手がそっと触れる感触。

「けっして許さん」

そう呟いた瞬間、リークの眼が輝くと同時に

五人が次々に消し飛んでいく。

最後にリーダー格の男がこちらを見る。

「まさかお前は...ひ...」

しゅばっ

最後まで言い終えることなく消し飛んだ。

僕は目を閉じるとその場に倒れた。

閃光が消え去り、全員が目を開けたときには

敵の姿は跡形もなく、目の前にはリークが倒れているだけだった。

ルーシュはリークの傍に行くとリークの頭を抱え込み、

「......すまない」

そう呟くと涙を流した。



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