第三章 ガンガルゼス鉱山 第三話 翼竜の襲撃
コツコツコツコツ。
しばらく歩いていると、遠くに松明の灯りが見える。
どうやら三人はまだ休んでいるようだ。
不意にアラムスが立ち上がり、大斧を構えている。
こちらの気配に気づいたのか警戒してるようだ。
「大丈夫、僕だよ」
笑いながら近づいて行くと、アラムスが遠くから声をかけてくる。
「リークか。遅かったな、何か問題でもあったか?」
「いや、奥には何もない。そろそろ上に登ろうか?」
みんなの前に到着した僕は苦笑いしながら言った。
シルファは岩に腰を掛けて俯いていたが、
顔を上げると鋭い眼でこちらを見ると、
「あのね......まぁいいわ。登りましょ」
そういうと静かに立ち上がり、僕に背を向けて階段へと歩き出した。
「ちょっとだけど、落ち着いたよあたし」
レーネも立ち上がり僕にニコッと笑いかけるとシルファに駆け寄る。
「おそらくもう少し登れば山の中腹への出口があるはずだ」
アラムスが二人を追い抜かし、先頭に出ると階段への穴をくぐり抜けた。
さっきの場所は気になるが、みんなに知られるわけにもいかない。
みんなの後を追い、階段への穴をくぐり抜けた。
階段を登り続けていると、灯りが見えてきた。
おそらく中腹への出口だろうか。
「どうやらあれがそうだな」
先頭のアラムスがそう言うと、ペースを上げる。
「ちょっとアラムス、あなた階段を崩したら祟るわよ」
「ほんとだよ!あたしたちのことも考えろ!」
後ろを登る二人が怒っているが、アラムスは振り返えらず出口にたどり着いた。
僕が最後に出口を通ると、そこには不思議な光景があった。
直径50メートルほどあるだろうか、大きな円形の平坦なところに出た。
周りの岩石は盛り上がっており、壁のようになっている
足元を見回すと、動物の死骸のようなものがたくさん転がっていて、異臭もする。
今いるところから反対側の方に、山頂への道が見えているが......
「変なところだな。さぁ行くぞ」
アラムスがそう言うと向こう側に歩き出そうとするので
「いや、待て!」
僕はそういうと、魔力を高めて周りを感知する。
「......来るよ。上だ!」
そう叫ぶと同時にはるか上空から一つの物体が急降下してくる。
「まずいぞ!翼竜だ!」
アラムスがそう言うと、大斧を上に構えて備える。
「シルファ!レーネ!僕の後ろに」
そう言うと、シルファとレーネが後ろに隠れる
「でっかーい!竜なんて初めて見たよー」
レーネが呑気に感心していると、
「感心している場合じゃないわ!下手をすれば全員死ぬわよ!」
レーネの腕を掴んでシルファが叫んだ。
「リーーク!俺が死ぬ前に何とか頼むぜ!」
円形の広間の真ん中にたち翼竜の鉤爪を受けるべく斧を上に構えている。
翼竜がみるみる急降下してくると足を下に向けてアラムスに攻撃した
「うおぉぉぉらあぁぁ」
アラムスが鉤爪を斧で受け止め堪えているが、ついに片膝を地面につける
「大気に存在する全ての水よ、我が力の一部となりそれに答えよ」
リークが目を閉じ魔法陣を生成するべく詠唱を始める、
一撃目を堪えたアラムス、翼竜は二撃目をアラムスに叩き込むべく
鉤爪を構えて再度降りてくる。
「次は持ちこたえれんぞ!リーク!!」
「水は氷となり氷は刃となる。貫け!!」
魔法陣が完成し、目を開け魔力を放つ。
降下してくる翼竜の周りに水が集まり、10本もの氷の剣に変わると
アラムスに襲いかかる寸前で、翼竜の体中に突き刺さった。
ぎぃぇえぇぇぇぇ!
甲高い鳴き声をあげながら、翼竜はアラムスのすぐ前に墜ちた。
「くっ。まだだ!」
少し下がりアラムスが斧を構える。
氷剣が刺さっているが翼竜はもがき立ち上がり、
「ゴォオオオオオオ!!!」
先程の甲高い声とは違い、雄叫びを上げてこちらに振り向き羽ばたかせた。
「まずい!そっちに行くぞ!!」
アラムスが叫ぶと同時に、翼竜はこちらに突進してきた。
詠唱している余裕はないので、魔力を最大まで高め
翼竜に手をかざす。
「貫け!!」
背に誰かが触れた気がした、その瞬間魔力はさらに増大し、
轟音とともに雷が放たれた。
突進を始めた翼竜を貫き、その体に大穴を穿つと
翼竜は沈黙したまま、地面に倒れ墜ちた。
「小僧。よくやった」
不意にルーシュの声が聞こえるので、辺りを見回す。
すると頭の上に梟が止まっている。
「だが、竜殺しは里では大罪だ。各地の竜族も、これは見逃さんぞ」
そう言うと、梟は上空へと消え去った。
こんなのが各地にいるのか、これから大変だ。
そんなことを思いながら、さっき魔力をくれたのは師匠か
ありがたや。などと考えていると体に力が入らないので
僕はその場に倒れこんだ。
「......か」
「......大丈夫かリーク!」
アラムスの声が聞こえるので、目を開ける。
「ああ、なんとかね......」
細い声を振り絞って答える。周りを見てみると
レーネが僕の手を握りしめ泣き崩れている。
上を向くとシルファの顔がある。
どうやらシルファの膝に頭を乗せているようだ。
シルファが僕の顔を見ると目が合う。
「あんな無茶しないで」
シルファが哀しそうに僕だけに聞こえる声で囁いた。
「よかった!起きたかリーク」
そう言うとアラムスは後ろ向きに倒れこんだ。
「詠唱無しってこんなに魔力飛ぶのか。すごいな師匠は」
力を振り絞って体を起こし、周りを見回すと、
横たわる翼竜が見える。
「まだ動いちゃダメよ。じっとしてて」
シルファはそう言い、哀しそうに僕を見ると、僕の頭を膝に乗せなおして、
手で僕の目を覆った。
その瞬間シルファの温かさが伝わってきて、
僕の意識は闇に消えていった。
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