第三章 ガンガルゼス鉱山 第二話 鉱山の真実
抉って作られた階段をひたすら登っていく。
崩れそうな箇所もあり踏み込む度にひやひやする。
アラムスが一番後ろを、レーネがその前を、僕の後ろをシルファが登ってくる。
シルファとレーネの足が少し震えていて足取りがおぼつかないが、この高さでは仕方ないだろう。
緊張をまぎらわすために僕は声をかける。
「シルファ、レーネ気を付けて。足場が崩れた時は飛ぶんだ」
「そんなことをしたら、命がないじゃない」
震えた声でシルファが答える、
「崩れた岩が当たると危険だ、何もない空中なら助けられるから」
「...わかったわ。信じる...」
シルファは震えた足を必死に動かしながら答えた。
「俺が落ちたときも頼むぜ。わはは」
アラムスが一番後ろを笑いながら登ってくる。
さすがは兵士長といったところか、肝の据わりかたが違う。
レーネは無言のまましっかり登ってくる。
僕は前に向き直ると、階段の岩の様子が少し変わってきていることに気がついた。
今までただの岩石だったが、少し青色がかった岩になってきている。
さらに上を見ていくと、階段は尚も続いているが、途中の壁に入口らしき穴が見える。
「階段の途中に何か入口みたいなところがある。休憩できるかもしれないよ」
みんなを励ますべく僕は声をかけた。
「休憩なんてしたら、もう階段に出れなくなっちゃったら?」
シルファが不安そうに答える、するとレーネが
「ごめんシルファ!あたし一回休憩したいかも...」
レーネが震えながら必死に登ってきている。
「体力も精神も削られてるんだ。休んでおいた方がいいぞシルファ」
アラムスが一番後ろをしっかり登ってくる。
「よし。しっかり休憩したらまた登ろう」
そういうと前を向き、入口を目指す。
どんどん進んでいくと、階段の岩の青みが増していく。
そろそろ入口に到達しようという頃に、つい最近感じた違和感と同じものを感じた気がした。
「...気の...せいだよな」
僕は俯き呟いた。
すぐ後ろを登ってきているシルファが慌てて止まると、
「ちょっと!止まるならひとこと言ってよ!」
震えた声で叫ぶと、レーネはびっくりして固まった。
「どうしたんだリーク。入口はもうすぐそこだぞ」
アラムスが不安そうにリークの顔を見ている。
「ごめん、なんでもない。さぁ行くよ」
そういうと僕は止めていた足を動かし登り始めた。
「なんなの...もう...」
シルファが睨みながら後をついてくる。
レーネは恐怖のあまりか相変わらず無言で登ってきている。
入口に着き、中を覗くと広い空間になっている。
松明を前に出すと、広い空間はずっと奥まで続いているが、先の方までは暗くて見えない。
「広い空間がある、ゆっくり座って休めそうだ。」
僕はそういうと入口をくぐり抜け、空間に出ると
松明を岩の隙間にさしこみ固定した。
「よし。ここで休んで」
そう言うと、僕は奥の様子を伺う。
シルファとレーネが空間に入ると、ガクッと崩れ落ちるように座り込む。
「はぁ...これがまだ続くと思うと地獄ね」
シルファは目を閉じため息をつく。
「...落ちたら、死ぬよねこれ...」
レーネが座って膝を抱えて顔を伏せると、そのまま黙りこむ。
「リーク、かなり奥まであるな。調べるか?」
アラムスがリークの隣に歩いてきて、奥を見据える。
「気になるけど...。アラムスはみんなを頼む。
僕は少し様子を見てくるよ」
「わかった。気を付けろよ、俺も少し休ませてもらう」
そう言うとアラムスは地面に座りこんで目を閉じた。
「早く戻ってよね、このまま戻らなかったら祟るわよ」
シルファはリークを睨んで言った。
「祟りだの呪いだのはもう勘弁してほしいところだね」
僕は苦笑いして答えると、奥に向かって歩き出した。
松明の灯りが届かないところまで歩くと、立ち止まり
「ここまでくれば大丈夫かな」
ふぅーっと前に息を吹きかける。
すると吐き出した息が全て光に変わる。
光を指先に集め、前を照らす。
光の魔法は目を痛めるため人前で使うなと、師匠にこっぴどく言われていたため
使うのは久しぶりで、なかなか扱いが難しい。
火の魔法よりはるかに遠くまで届くが、少し眩しい。
前を照らしひたすら歩き続けていると、さっきの違和感がまた魔力に触れる。
「...これは。気のせいなんかじゃないぞ」
進む足取りが早くなっていく。
どんどん進んでいると、かなり向こう側で行き止まりになっているのが見えた。
目を凝らして見ると、行き止まりになっているところに
石のテーブルのようなものがあり、その近くに赤みがかった布のようなものがいくつか落ちている。
どんどん近づいて行くと、疑念が確信に変わると同時に、とんでもない光景を目にすることとなった。
行き着き、それを見て言葉を失う。
テーブルらしき台には、人間の骨が横たわっており、辺りの地面にも骨が散らばっている。
赤みがかった布は、おそらく血を拭き取った布だろう。
台に横たわっている骨の心臓部には、半透明の青色の石が刺さっている。
違和感の正体がこの石であることは間違いない。
石に近づくとともに、指先に宿す光が乱れ始めた。
僕は少し距離を取り直し、台を見つめると小さく声を漏らした。
「やはり...メリアの石......」
何かの実験をした形跡だが、まさか人体実験なのか
魔法使いであるリークには安易に近づくのは危険すぎるため、
離れたところから観察し、脳裏に念写する
「梟よ、我の元へ」
そう唱えると、指先に宿す光の一部が分かれ梟の形になる
「小僧か......ほぅ、これは興味深いな」
梟が喋りだす
「今は手が離せんでのう。そこは後で調査しに向かうがゆえ、
人間どもには見られぬようにしろ」
「はい。では見た情報をお渡ししておきます」
僕はそういうと梟の頭をつつき、念写した光景を送ると
梟の光はゆっくりと消えていった。
「そろそろ戻らないとな......」
調査はルーシュに任せ、僕は来た道を戻っていった。
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