44.Ephilogo

東京駅。白石千秋は、新幹線のホームにいた。東京は数年前の洪水で遷都が決まったため、以前ほどではないが駅のホームは混雑していた。

東京発の上り列車を待っていると、後ろから声がした。

「千秋!」

両親の声だった。

「なんかあったらすぐ連絡するんだぞ!」

心配性のお父さんはいつも大袈裟だ。昨日も、RockStar田中が「新京で普通に電車で帰宅していた女性が、存在しない駅 白鷲崎駅に降り立ってしまった」というどこかで聞いたような都市伝説を語るテレビ番組を、お父さんは真剣な顔で見ていた。

その真面目さが鬱陶しくもあるけど、心配してくれるのは嬉しい。

「一人娘が初めて一人暮らしするから心配しているのよ」

それに対してお母さんはどこか余裕だ。

「わかったよ」

千秋が微笑む。お父さんの顔が少し和らいだ。

その時、後ろから声がした。

「こんにちは」

「だっ、誰だ君は」

「千秋さんの就職先の『株式会社 Cüreateキュリエイト』の佐藤倫乃介と申します」

OJTの佐藤さんだった。彼はインターンの時にかなり助けてもらった。

お父さんは名刺を受け取ると「よ、よろしく」と戸惑いながら言った。

「ご心配かとは思いますが、私たちが彼女をしっかりサポートします。ご安心ください」

お父さんは頭を下げた。「どうかよろしくお願いします!」

わかりました、と佐藤さんが言った。

インターン後、初めての出社。緊張する。でも、今日は榊由美先生の占いで一位だったから大丈夫なはず。

「じゃあ、行こうか」

千秋は新京行きの新幹線に乗り込んだ。

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