エピローグ
最後の生贄が出されて数年後、魔女の動向と影響の調査のため、王都から調査隊が派遣された。数日に渡る調査の末、魔女との接触及び姿の確認ができなかったこと、魔女特有の魔力が確認できなかったことから、魔女が「消滅」したと結論づけた。心配されていた呪いやそれらしい影響もなく、周囲の往来または居住も可能となった。
調査の際、魔女が住んでいた砦の中庭にて調査隊があるものを発見した。形状から見るにおそらく何者かの墓のようだったが、壊す理由もないのでそのまま放置された――
……ああ、例の砦か。知ってるよ。「人食い魔女」が住んでたっていう。
俺の仕事は食料とか雑貨をここらへん一体の村とか町の店の依頼を受けて運ぶことでな。よくあの砦の近くを通るんだ。たまに一晩夜を過ごすこともある。多少ボロっちいが雨風は十分しのげるんでね。取り壊されないのも僻地にあるってのもあるが俺みたいに泊まるやつがいるってのもあるらしい。
ああ、墓についても知ってるよ。中庭にあるやつだろ? 中庭自体は手入れとかもされてなくて草も生え放題でなあ。けど墓だけ毎年誰か来てるようなんだよ。
なんで分かるかって? ――毎年この時期――ちょうど春先の今ぐらいだな、墓の周りを整理して花を供えてくやつがいるんだよ。
ユキワリって知ってるか? この地域に今の時期咲く花なんだが、それを二、三本必ず供えていくんだ。誰だか分からないけどな。
それを見ると、ああ今年も春が来るんだなって思って、なんとなく心の奥が温まるように感じるんだよ。うまく言えないけどさ。
人食い魔女と最後の生贄 霧崎圭 @sweeney_toad
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます