纏う火の精
猛るヴォイドを前に康太は弾に話しかけた。
「ええと、そういえばお名前なんて言いましたっけ?」
「段田だ。君は?」
埜々に知られてしまってるし隠してもしょうがない。
そう思い、康太は白状するように名前を弾に教えることにした。
「入江って言うっス。俺、あいや僕が突っ込むんで、フォローをお願いしても大丈夫っスか?」
「君の楽な風に喋ってくれていいよ。了解した。君の背中は僕が守ろう」
そう言って弾は銃に弾丸を込める。
ポケットから取り出した白銀の弾丸を6発装填する。
痺れを切らしたようにヴォイドは槍を地面に突き立てた。
「相談は終わりかい?」
レーヴァテインを持つ手から漆黒の炎が吹き荒れる。
それが突き立てた地面に向かって伝っていき、地面に到達した瞬間に黒炎が火柱を立てながら2人に迫って行く。
「リーシャ!」
康太がその名を叫びながら剣を振る。
すると焔の斬撃が火柱を叩き割った。
しかし、その先にはヴォイドが次の手を講じていた。
いくつもの黒い魔法陣が空中に展開されており、そこから同時に炎の矢が放たれた。
流星の如く降り注ぐ矢を撃ち落とすべく康太は剣を構えたが、すかさず弾が康太の前へ出た。
そして銃を連射し、それらを全て相殺した。
リボルバー式の銃であるのに、その装填数以上の弾丸を射出出来るのは彼の魔術「弾丸生成(バレッドクリエイト)」のおかげだ。
彼の銃は何の変哲も無い普通に銃だ。
彼に魔術は弾丸にこそある。
彼は射出と同時に弾丸を生成し、それをひたすらに繰り返すことで銃の連射を可能にした。
「すごい、あれを打ち消すんスか」
素直に康太は感嘆した。
その魔術行使を見るだけで惚れ惚れする。
「おもしれえ!じゃあこれはどう防ぐ!」
ヴォイドはレーヴァテインを2人に向けて投擲する。
「レーヴァテイン・アブソリュート!」
すると黒炎を纏うその槍は二つ、四つ、八つと分裂していき、数を数えるのがバカらしくなるくらい増殖されていく。
「くそ!消しきれないか!?」
弾はそれを撃ち墜とそうと先程のように弾丸を射出していくがどうしても消しきれない。
その様子を見て今度は康太が前に出た。
「リーシャ!纏うっスよ!」
(はい!)
そう言って康太の持っていた剣がリーシャの姿に変わり、康太の横に立つ。
弾は一体何が起きているのか。
手を止めてしまいそうになるほど、その光景に唖然とした。
康太はリーシャの肩を掴み、言の葉を唱える。
「久遠の業火を纏いし不死鳥よ。我に力を与え給え!」
リーシャの身体が赤く光り、次第に身体が橙色の焔に変化していく。
「リーシャ・ヒュポグリフ!」
その真名を叫ぶと焔となったリーシャの姿は不死鳥を象る。
そしてその不死鳥は康太を優しく包み込んだ。
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