黒炎再び


弾は銃を片手に構えながら左側のズボンのポケットからスマートフォンを取り出す。

すぐさま片手で操作し、電話をかける。

ディスプレイには魔法省名古屋支部長である由美子の名前が表示されていた。

発信されてからワンコールもしないうちに電話が繋がった。


「はいはい、由美子ちゃんですよー!」

「あー由美子ちゃん聞こえるかい?とりあえず僕の目だと今のところ魔獣はあれだけなんだけど、手が離せないかもしれない」

「えっちょっとそれどういうこと?」

「とりあえず埜々ちゃんだけでもそっちに合流させるよう頑張るから、うおっ!?」


飛んできた火の玉が弾の帽子をかすめる。

帽子は頭の部分が軽く焼け焦げ黒くなり煙を噴き出している。

間髪入れずにヴォイドは弾へ迫り、右手に炎の槍を出現させた。


「レーヴァテイン!」

獄炎に包まれたその槍は全てを燃やし喰らう真紅の槍だ。

そして槍の矛先から勢いよく炎が放たれた。

それを見た埜々は、身に危険を感じ、すぐ様詠唱を始める。


「七つの光よ!」


埜々はレーヴァテインから放たれた炎を光の盾で防ぐ。

そしてその壁の上にいつの間にか弾は登っており、左手を銃のシリンダー部分に当てて一言呟く。


「バニシングバレッド装填」


そして燃え盛る炎をめがけて銃弾を1発放つ。

炎の中に飲まれたかと思いきや、勢いよく火力を増していた炎が、初めから存在しなかったが如く、綺麗に消え去ったのだ。


「何!?」


ヴォイドは驚愕の表情を浮かべて、2人から距離を取る。

ヴォイドの足元からメラメラと炎が燃え上がる。


「おいおい、なんだ今の。俺の炎をかっ消したのか?ちょっとは楽しめそうじゃねえか」


足元の炎が黒く変色し、火力が勢いを増す。

手に携えるレーヴァテインを纏わせる炎すらも黒炎に変わる。


「炎が黒くなった!?」


埜々はヴォイドの炎の変わりようを見て驚く。

弾は埜々の前に出て銃を構える。


「なるほど黒魔術か。そんな禁術何処で手に入れたんだい?」


弾はヴォイドに問いかけ、銃弾を1発放つ。


「黒炎陣!」


ヴォイドはレーヴァテインを地面に突き刺し、その場に黒炎の壁が出来上がる。

弾丸がその壁にぶつかると黒炎の壁は綺麗に消え去った。


続く第2射、第3射を弾は放つ。

それに対して、ヴォイドは地面に手をあてる。

すると先ほどの「黒炎陣」より薄い黒炎の壁が2枚現れる。

しかし、壁は2枚とも弾丸が消し去った

そこへすかさず、埜々が魔術を発動させる。


「極門、星門、天門、光門。四門を解き放ち、暗雲を切り開く一筋の光となせ!撃ち抜け!閃光の弓矢!」


無数の光の弓矢がヴォイドめがけて放たれた。

ヴォイドは避けるそぶりすら見せず、身体中に黒炎を纏わせた。

するとヴォイドに当たった光の矢は灰塵と化し、何事もなかったかのように地面に突き刺していたレーヴァテインを手に取った。


「たく。嫌になる程強いなこいつ。埜々ちゃん。隙を見てこの場から離脱してくれ」

「え、でも!」

「流石にこの場に冠位二人が抑えられると他がまずい事になりかねないしね。どうやら相性は僕の方がいいらしいし、仕方がない」

「おいおい、逃がさねえって」


ヴォイドは黒い結晶のようなものを地面に叩きつけた。

すると黒炎が屋上全体を包み込み、結界が作られた。

それを見た弾は先ほどと同じ「バニシングバレッド」を結界に向けて撃つ。

しかし、先程消した「黒炎陣」と同じようには消し去れず、炎が再び燃え盛り出す。


「どういう手品だい?」


ヴォイドは前を向いたまま、後ろに大きくジャンプをする。

そのまま黒炎の中に消え去ったのだ。

次の瞬間、弾と埜々の後ろにある黒炎からヴォイドが飛び出した。


「企業秘密さ!」

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