6.

 俺には、なんにもないんだ。

 たくさん考えて、小さいころから今までとか、いろんなことを振り返ってみたんだけど、やっぱりなんにもなかった。

 やりたいこととかもなかったし、心から楽しいって思うようなこともなかった。ただ毎日学校行って、家帰ってご飯食べて寝るってさ。

 自分にとってもまわりにとっても、当たり障りのない毎日って言うの?

 人生、そんなものだと思ってた。

 これからも、ずっとそんなものなんだろうなって、なんとなく思ってた。

 でも、こんなのがずっと続くんだとしたら、生きている意味があるんだろうかと考えたことがあったんだ。

 不満があったわけじゃないと思うんだけど、でも、こんな人生になんの意味があるんだろうかって。

 まあ、考えてみただけで、答えを見つけようとはしなかったけどね。え? だって、見つかるわけないもの。そうでしょ?

転生して異世界で冒険三昧、みたいなことも用意されてなかったみたいだし。

 だから。

 もう一度人間やりたいかって言われたら別にいいかなって。

 だからといって動物とか虫とか植物とかは生存競争とか大変そうだからイヤだし。

そういうわけなんで、俺、次の人生とか生まれかわるとか、パスだわ。




 まるで昨日見たテレビの感想でも話すように、崕はよどみなく淡々と打ち明けた。最後には、あっけらかんと笑ってみせた。

 そこに悲壮感のようなものはいっさい存在しなかった。


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