13.
***
樽前は顔を洗うような仕草で涙を拭った。
涙を拭い顔を上げると、この食堂にたどり着いた時以上に穏やかな表情になっていた。
「まだあるかな?」
そう言って紙コップをサエに手渡す。
「あるんだけど……しっかりのびちゃったみたい」
鍋の中をのぞき込んでサエは申し訳なさそうに言った。
それでもいいと樽前が言うので、サエはのびきったインスタントラーメンを紙コップによそう。一口ずつだけ、自分と篁の分も用意して、ラーメンの入った紙コップで乾杯をした。
「こんなものだけど、『残せた』って答えでいいよな?」
「もちろん!」
サエは間髪を入れずに元気よく、
「いいんじゃない」
篁はのびきったインスタント麺には難色を示したが、樽前に対しては前向きな言葉を投げた。
樽前は二人の言葉をしっかり受けとめて、そして今一度キャンプ場の景色を眺めた。
思わず口もとが緩む。
目頭が熱くなる。
誤魔化すように紙コップのインスタントラーメンをすすり上げ、そして満天の星空を見上げた。
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