7.

 サエの威勢はそう長くは続かなかった。

 樽前の思い出を元に厨房に用意されたのは、袋に入ったインスタントラーメンと鍋。

「えっと……本当にインスタントラーメンを煮るだけの……」

 飲み込んだ文字から作り方を探りながら、サエの表情はどんどん曇っていった。

「トッピングが特別とかじゃないの? 分厚いお手製チャーシューが載っているとか、カニとかホタテとかがてんこ盛りとか」

 不機嫌そうに篁が言う。有名店のメニューを食べ損ねたことをまだ根に持っているようだった。

「そういうものもなく」

「え? そんなの作らなくていいじゃない」

「ダメ! ちゃんと作るの!」

「せめて『まるで生麺』的なやつならまだしも。昔ながらのインスタントラーメンでしょ」

 どうしてそんなものが選ばれたのかと、篁の恨み節が続く。

「これが選ばれたことに、ちゃんと意味があるんだよ」

 そう言いつつも、調理台に置かれたインスタントラーメンの袋が目に入ると、自信がなくなってくる。

 サエはエイと気合いを入れて、『煮るだけ』の調理に取りかかった。

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