7.
サエの威勢はそう長くは続かなかった。
樽前の思い出を元に厨房に用意されたのは、袋に入ったインスタントラーメンと鍋。
「えっと……本当にインスタントラーメンを煮るだけの……」
飲み込んだ文字から作り方を探りながら、サエの表情はどんどん曇っていった。
「トッピングが特別とかじゃないの? 分厚いお手製チャーシューが載っているとか、カニとかホタテとかがてんこ盛りとか」
不機嫌そうに篁が言う。有名店のメニューを食べ損ねたことをまだ根に持っているようだった。
「そういうものもなく」
「え? そんなの作らなくていいじゃない」
「ダメ! ちゃんと作るの!」
「せめて『まるで生麺』的なやつならまだしも。昔ながらのインスタントラーメンでしょ」
どうしてそんなものが選ばれたのかと、篁の恨み節が続く。
「これが選ばれたことに、ちゃんと意味があるんだよ」
そう言いつつも、調理台に置かれたインスタントラーメンの袋が目に入ると、自信がなくなってくる。
サエはエイと気合いを入れて、『煮るだけ』の調理に取りかかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます