一年前
結城は数年前、とある女性と結婚した。その女は天女のように美しい女だった。季節を追い払うような淡い水色のストールを巻いて、いつも笑っている。悪い事情を全て明るい方向へと導き、人に説くような様を結城は「天女のような女」だと思った。天女のような女は動きの一つひとつが絹のようにきめ細かく、清らかで、見ていて飽きなかった。
出会いは美術館で見たモネの睡蓮を見上げていた時のことだ。その当時はまだ仕事をしていて、依頼先の待ち合わせ時間の調整をしつつ美術館に訪れることが多かった。モネの睡蓮は常設されていていつでも見る事ができた、そしてその日は無料開館だったというのもあって行ってみた。結城は審美眼があるわけでもなく、芸術に詳しくはなかった、ただの暇つぶし程度で絵画を眺めていたが他の客は誰も睡蓮に見向きもせずに他の展示に移っていた。
すると横にいた女が、
「きれい」
と言った。美術館で話しかけられることを想定していなかったが、結城は落ち着いて答える。
「ええ、そうですね」
「私の独り言聞こえてました?」
「独り言だったんですか?」
「どちらかというとモネの睡蓮に話しかけたのかも」
変な女性だと思ったが、立ち去るわけにもいかなかった。その女はモネの睡蓮よりもはるかに美しさを象っている。
絵画よりも美しい女性だった。髪はどこまでも黒く、鼻先がすっとしてスリムなのが綺麗だった、整形するにも限度があるほど、黄金比を凌ぐ。
「私の顔に何か?」
「いや、どうして睡蓮を見に来たのかと思って」
「この睡蓮が生きているようには思えなくて。いつも考えてしまうの、睡蓮は生きているのかって」
結城はもう一度睡蓮を見た。水面に浮かぶ小さな花々は睡蓮と言っても良かった。水があれば花だって咲ける。だから結城は咲いていると頷くが、女は首を振った。
「そういうことじゃないの、生きているという視覚的な物を指しているわけじゃなくて、内面の話をしているの。この花は生を得て、死を全うしているのかが気になるの」
「ちょっと俺には難しいですね、絵は絵としか見てないから」
「モネがどんな想いで描いたか興味が無い?」
「あまり。聞きたいけど本人は死んでるから」
女は笑みをこぼした。なんだか分かりやすいクイズを外して馬鹿にされたような気分だったが、決して嫌な気持ちにはならない。
「面白い人ね、名前を教えて頂けますか?」
「結城凪正」
「どういう字を書くの?」
「縁結びの結にお城、名前は風が穏やかになるあの凪に正しい」
結城は名乗ってから自分が風水師であることを明かすと、天女のような女はまたも笑った。本当に優しい笑い方だった。それからしばらくは睡蓮の前で会う事が多くなり、彼女は自分の事を話してくれた。彼女は毎週のように睡蓮を見て、内面的な死について考えていた。結城には難しくてよくわからないとばかり言っていたが、聞き逃しはしなかった。割と興味深いとも思ったのだ。
「きっとモネの睡蓮がなかったら、出会う事は無かったね」
「そうだな」
「未だに考えるの、もしモネが生きていて今の世界を見つめたとして、睡蓮をどう描くのかなって」
「本当に睡蓮が好きだな」
天女のような女は晴れやかに笑った。
「凪正さん、貴方にもいつかわかる日が来る。貴方だってきっとモネの睡蓮が好きになる日が来るよ」
「そうかな?」
「そうだよ。だってあたしたちはモネの睡蓮を見に来たんだもの、モネの睡蓮を見るために生まれたんだよ」
そしてしばらくしてから結城は天女のような女と結婚し、子供は死産した。産声を聞く前に、あっさりと死んでから二人は黙ったまま、そして天女のような女が退院した。どこか晴れ晴れとしていて、何故か結城を見てくれなかった。
どちらも悪くない、嫌なタイミングがぶつかってしまっただけだ。娘の顔を拝めないまま死んだ方が精神的に良かったと安心していた、結城は気のせいかもしれないがカエデの亡骸を見かけたが、あれは見ていい物ではなかった。
天女のような女はようやく家に戻って来た、お互い投げかける言葉は無かった。
「凪正さん」
何か飲み物を用意しようとした時、女がようやく決心がついたように口を開いた。医者にもショックが大きいだろうからしばらく側にいてあげてくれと言われたばかりだったのに、彼女はまるで今までの事を忘れたように太陽の光を浴びている。
彼女は三つあるうちの一つの椅子に腰かけていた、結城は二つ分のお茶を運び向かい合って席に座った。無駄になったカエデ用の玩具や椅子は部屋の隅にじっと座り込んで、二人を睨みつけている。
「別れない?」
「どういうこと?」
「文字通り、離婚しましょって意味」
さらりとそんなことを言うので結城は考え込んでしまった、冗談を言うことが多かった天女のような女は肌が綺麗だった。疲れやショックといったような嫌な色合いを見せない、どこまでも白い肌。
「もうね、離婚届の用意はあるの。あとは貴方が書くべきところを書くだけ」
「なあ、カエデの事で傷ついているのは良くわかる。でも、あれは誰も悪くは」
「カエデの事はいいの」
きっぱりと言った。
結城はお茶を飲んで、喉の調子を整えながらゆっくりと尋ねた。
「じゃあどうして?」
「空が晴れているから」
「そういうのはいい、正直な気持ちを教えてほしい」
「驚かないの?」
「何が」
「別れる事、否定も肯定もしないから」
結城は机に肘をつけた、窓を閉め切った部屋の中は埃臭さが目立つ。
「否定しようか肯定しようか迷っているが、カエデの事で別れよう言うならまだ分かる。もちろん説明は欲しい、カエデじゃないなら一体どうして離婚しようとする? 俺は子供がいなくてもお前と一緒に暮らしたいと思うよ」
天女のような女はコップを握ったまま動かず、思案したままだった。結城は言葉を付け加えた。
「お前は今、一番傷ついている、お前はずっと腹に小さな命を抱えてたんだ。それが死んでしまっては……」
「それがね、凪正さん。私これで良かったって思ってるのよ、実のところを言うと一番ほっとしている」
「それはつまり」
瞬きした結城は一拍置いて、吐き出す。
「本当は子供なんて欲しくなかった……そう、言いたいのか?」
「そうじゃないけど……仮に子供が産まれたとして、本当に幸せにできるか自信が無かったの」
「そりゃあ誰だって初めて親になる。不安も心配も何だってあるさ、でも親になるやつが不幸にしたくて産もうなんて思わないだろ?」
「でも、子供は私たちの都合で産まれて、そして死んだ」
天女のような女ははっきりとそう言った、お茶が入ったカップが少しだけ揺れる。どうしてそんなことをいきなり言い出すのか、結城は特に驚きはしなかった。この女はそういう女だとどこかで知っていた。一つ屋根の下で暮らしていると蓋を開けて覗き込むように色々な事が見えてくるものだ。
「新聞に挟まった広告を読まず、そのまま捨てちゃう、それがあたし思う子供だったのかしら? あたしたちそんなものを産んで、幸せになれるのかな? あたしどこかで冷めちゃったのかもしれない、自分が幸せじゃないのに子供を幸せにする事って出来ると思う?」
まるで他人事だ、そして気づけば結城は肩を落としていた。
「幸せじゃなかった?」
「幸せよ。あたし、本当に幸せなの。でも幸せに慣れすぎて、それが普通になっている。凪正さんに幸せ以上の物を求めようとしてしまう、だから距離を取りたい」
天女のような女は一文字一句、間違える事の無いように丁寧に言葉を紡ぎ静かになった。結城は反論をする術を考え、言わねばいけない言葉が無かったかどうかを探してみても天女のような女が動揺するような一言が浮かばなかった。今までの生活を振り返れば分かる事だ。おそらく、ここで何も言えないのが結果なのだ。
結城は頷いた。
「いいよ、お前がそう言うなら。離婚しよう」
同情もすることなく、薄情である必要でもなく結城は離婚届に書くべきことを書いた。天女のような女はただ窓から空を見上げているばかりで、お互いに掛け合う言葉などは一つとして無かった。
「きっとあの子は違うところで、元気にしているといいんだけど」
そう聞こえた気がするが、結城は聞えないふりをし続けた。
「適当に済ませるのはもうおしまい。いい加減、巡り合いを大切にしなきゃ。生き死にの時代は終わったんだよ、凪正さん」
はっとなったように意識が戻った。眠っていたわけでもないのに、一瞬の時間を奪われ、別の宇宙に飛ばされている感覚から醒める。どれくらいの時間が経ったか、壁にかかった時計を見ると日付が変わる直前だった。
「落ち着いたなら話してくれるか?」
日暮は頷いた。中条はこの場の空気を感じ取ったのか、すぐに部屋の隅に引きこもった。完全にこちらに任せるらしい、警察官の癖にこういう時は役に立たない。だけどこの子供に公的な力など無意味だ。もっと別次元の視点を与えなければならない。
「とりあえず、どこに住んでいるか教えてくれないか?」
日暮はまたも黙って、相手の様子をうかがっている。いちいち相手の色を見ながら会話をするのは疲れる。結城も経験している、だからこう言った。
「言いたい事があるなら、言えばいい。俺は黙って聞く、分からなかったらちゃんと質問する」
結城は言い切ったが日暮は反応が薄く、結城の動きを途切れることなく撮影しているかのように追いかけていた。張り付いた表情が無機質に働く監視カメラのようで、結城の背中は何か妙な物で縛られる。
「俺が見えるか?」
「え……」
「お前は一体何を見ている? 生きているのかそうじゃないのか分からない」
まるでモネの睡蓮だ。
「それはおじさんも同じだよ、おじさんから音が聴こえない」
日暮はようやく言ってくれた。しかし、求めていたものとは別格のものだった。それれはこっちの台詞だ。彼女にとって音が重要で、その音というものが自分には聴こえない。
「音が無いというのは生きてないってことか、じゃあ俺は気づかない内に死んでた?」
「違う。生きていないだけ」
「それは死んでいるってことだろう」
「生イコール死なんて、誰が決めたのかな」
彼女は生を失えば死ではなく別の方向へと向かっていて、結城はその方向へと向いていると言いたいのだろうか。そこはどこだと言うのだろう? 例えば別世界? 別の惑星? 結城には想像力が無い。小難しい事を言うこの少女の言葉を繰り返すだけで精いっぱいだ。
「じゃあ俺は生きていない何かで、生きても死んでもいないってことか?」
日暮は頷く。
「お前にはそう見える……いや、聴こえるのか」
「私と同じ」
ミハルは目を閉じ、遠くでまだ降っている雨の音を聴いていた。結城はただ日暮の言葉を待っていた。コーヒーサーバーの電気が入り、音が鳴っているのが邪魔に感じる。
「この世界はうるさい。人がいるたび、軋む音が聴こえる。でもおじさんの側にいると静かになる、音が無いから」
「心音でも聞いてるのか?」
「分からないけれど、人には必ず音があって聴こえる。心地よい時はほんのたまにあるけれど大体はうるさい。耳を塞いでも音が刺すように入り込んでくる」
酷い扱いを受け、街中を走り回って逃げた少女は不思議な音を聴いている。そして結城にはその音というものは聴こえない。
座ったまま中条を見ると壁に身体を預けたまま優雅にコーヒーを飲んでいる。四苦八苦していた少女の会話をただ聴いていた男に、これからのことを話さなければならない。結局のところは、日暮がどうしたいか次第だ。
「どうするんだよ中条クン。事情はこの子供が言った通りだ」
「預からないの?」
「……ええ?」
正気かこの友人は。
中条は飴玉を転がすように簡単に言った。
「僕の意見を聞きたいか? 通報はしないし、これを虐待として受け持たない、口外してしまうとこの子にとって良い事が何もない」
「本気か?」
しかし、だからといって暴力を振るう家に帰すのはあまりに残酷だ。
日暮は反対の声も上げず、いつものように静観しているがどうしてそこで何も言わないのか不思議だ。お前の人生に加担しようとしている男二人、しかも何も知らない互いが関わりあおうとしているのに。
しかし中条の言葉を断固拒否できない自分がいる。じゃあ結城ならどうする? と聞かれても納得できる答えが無いのだ。だからといって、すぐに預かってこいつを育てるよとは言えないし、何より本人の意思だ。
「お前はどうする、お前次第だ。あいつはああ言ってるが警察に助けを求めることだってできるし、お前の家に帰りたきゃ送ってやる。後者はもちろんお勧めしない。最終的にお前がどうしたいかだ。お前の事はお前が決めろ」
「それは違う」
日暮ははっきりと言った。それが初めての意思表示にも見えた。
「決めるのは貴方たち、いつだってそう」
貴方たち?
何故複数形なのか、まるで自分も含めたこの世界中の人たちに向けられたような言い方だ。
意味深な言葉を残し、日暮はそのまま目を閉じそうになった。どうやら疲れがまだ残っているようなので結城は中条に向かって首を振る。もうこのまま休ませて明日また話を聞いた方が良い。
すると事務所の扉が開いて日暮は飛び上がるようにして肩を震えあげた。
「こんばんは、今お邪魔していいかな?」
長い黒髪を一つに結んだ女性が鞄を手に入ってくる、すらりとした身体は傘をさしていても雨で濡れていた。
「草ちゃん、ごめんね。こんな遅くに」
「いいよ。で、その子かな?」
「うん」
日暮は顔には出ていないが新しい登場人物に怯えている。少しずつであるが、この少女の機微に気づきつつあると思いつつ側に寄ってから静かに言った。
「あの人は医者で、俺の知人だ。まあ、性格はちょっとアレだが君を傷つけたりはしない」
「アレってなに、結城さん」
草壁が鞄を置いて、腕を組む。中条は草壁からとは距離を置き、扉の方へと向かって手を上げた。
「じゃ、じゃあ僕はもう帰るよ。あとは結城に任せるから」
「あら、帰っちゃうの? 中条さん」
「え、ええ……そろそろ帰らないと明日起きられなくなっちゃうんで」
「それにしても警察も役立たずね、こんな小さい子も守れないなんて」
中条はあえて聞いてないふりをして事務所の扉を閉め、階段をそそくさと下りて行った。中条は草壁がとても苦手で、いつも会話にぎこちなさがある。草壁も警察官が嫌いだし、中条は草壁の視界に入らないように回避していた。どうにも「草壁さんは言葉に鋭さがあって、全て正しいと思わせるから怖い」らしい。大丈夫、世の女性というのは大抵そんな感じなのだ。結城と結婚し、離婚した女もそんな感じだった気がする。
「あたしは草壁です、よろしく。貴方の名前は?」
日暮は首を振って、部屋の隅に駆けていく。逃げ場がないというのに、小動物は何されるか分からず草壁を強く警戒していた。
「あたしってそんなに怖いかしら……」
日暮は医者でさえも保護者に連絡すると勘違いしているらしい、自分の立場をよく理解しているのか触れたら噛みつきそうだった。結城は日暮に近づいて問答無用で抱き上げると草壁の前に運んだ。
「大丈夫だ。少し診てもらうだけだ」
「適当な医者だけど守秘義務は守るから」
「草ちゃんがそう言うと、日暮が怖がるからやめろって……」
草壁は笑いながら寝室へと動揺する日暮を外に出て三階の自室へと連れていった。肩越しに振り返る日暮の目はまるで虚しく、寂しそうでもう会えないのかと不安に駆られている目でもあったが、どうにか大丈夫だぞと視線で送った。伝わるかは分からないが、すべきことはした。
診察が終わるまで、再び事務所のソファに座ると生ぬるくなったコーヒーを全て胃に落とし込んだ。中条は逃げるように出て行ってしまったが結局あの少女をどうするか決められもしないまま、丸投げされた。
本当は匿ってやりたい。
両親から虐待を受けて、身体をボロボロにした子供を追い出すような残酷さなど持ち合わせてはいない。しかし中条の言う通りあの子は何かが違う、暴力を浴び続けた子供はどこか達観しているように見えるのか、結城は虐待を受けた子供を見た事も接したことがなく、まるでガラスのおもちゃに触れている。
しばらくすると扉が開き、草壁が疲れを解いたような息を吐いて出てきた。傷でも負ったように顔をしかめ、結城と目を合わせてもすぐに逸らしそうだ。
「日暮は」
「上で寝かせた……いいかしら」
「うん。ありがとう。一人で寝れるかな?」
「どうかな……目を閉じてはいたけど」
どこか上の空の様子で草壁は結城と向き合うようにソファに座った。すらりと伸びる足を組んで、何かを考え始めている。結城はその横で新しいコーヒーを淹れなおし、二つのカップを机に置いた。草壁が礼を言ってから、細々とコーヒーを飲み、結城も苦い液体が胃の中へと流し込んだ。
「状態はどうだった」
「酷いね」
草壁が日暮の代わりに痛みを全て背負っているように、苦痛に満ちた表情だった。
「あれは人間が受けるような傷ではない、打撲、火傷、切り傷……生きているのが不思議なくらい」
「あんたがそこまでキレることはないだろ」
「でも嫌なの、あんな小さな子があんな目に遭うなんて」
「分かるよ」
そして事務所の中は静かになった。誰も喋ることはなく、コーヒーをすする音だけが空しくなりながらも、やはり浮かぶ言葉が見つからない。同情も怒りも日暮の為にならない、結城はいつの間にか彼女の事を考えていた。
「あのね、あたし日暮ちゃんの胸を触ったの」
突然沈黙を破ってくるので、コーヒーを噴き出しそうになったが草壁の趣味は良く知っている。彼女は異性に興味なんてものは無く、だからといって同性にも興味が無い彼女は淡々と述べた。
「でもあの子、驚きもしなかった。抵抗もしなくて、正直怖い。普通、あのくらいの女の子なら恥じらいとか、動揺とかあってもいいじゃない?」
「まあ……そうだな」
「そしてあの子聴覚が過敏なのね、大きな音や不思議な音に強い反応を示す」
「聴覚?」
「そうよ」
日暮は音が聴こえると言っていた。そして結城にはその音が聴こえないとも。
「なあ、草ちゃん……俺って、生きてるかな」
「何を突然言い出すの。結城さん、生きてるっていうのはどこまでを生きていると判断するのかしら、医師っていうのはね、医学の観点から判断した上での「死」を決めるの。それはすごくあっさりとして、しかしながら重い槍をご家族に突き刺す思いで言わないといけない。だから生きてる、死んでるをあたしが言うのは簡単な事じゃないよ」
「ごめん、でもあの子は言うんだ。人には必ず音があり、音が聴こえないと生きているか死んでいるかもわからないって」
草壁の表情が少しずつ和らいでいくのが分かった、コーヒーの量はすぐに減ってお代わりをした。
「何かを聴き取っているのでしょうね、でもあの子が言うならきっと生きていないってことよ」
「一体何が聞えるんだろうな?」
例えばフルートのような音、ジャズで流れるサックスだろうか、うるさいと日暮は言って耳を塞いで生きてきたのだから、きっと想像しがたい不協和音が響いてきているのだろう。
結城は耳を澄ませてみた。
しかし、何も聞こえはしなかった。
一人は捨てられ、
一人は拾われ、
一人は怒りを鎮めるために身を投げ、
一人は自ら傷をつけ、
一人は押し倒された。
ぼくたちは話し合った、これから家族になるための術を探しに行こう。
火星倶楽部 引用
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