第54話 山
人間調子に乗ると注意力が散漫になるって思ってたけど、やっぱり調子に乗るよね!
いつの間にかボス恐竜さんを見失っていた事に気が付いてなかった。
「危ない!」
小南先輩が声を荒らげた! でも、誰に言ったか、分かったのは結果が出てから…。
「ガィーーーン!」
私の機体にでっかい石…。でっかい石だったら岩かな? が、命中した。その反動でよろけ、モニターの風景が揺れた。
犯人は、恐竜さん達の中にいる! それは…、ボス恐竜さん、あなたです。
器用に尻尾ででっかい岩を投げて、私の機体に当てた。
何故、分かったかって…。それは、目の前で二回目を投げようとしていたから!
モニターに[ALERT]がいっぱい出て、さっきのでっかい岩のダメージが大きかったのが解った。
「このぉ!」
と、ライフルを向けようとした瞬間…。
「あうっ!」
でっかい岩がこっちにぃぃぃぃぃ!避け…、られなかった!
「ガィーーーン!」
って音と共に、今度は仰向けにすっ転んだ!
「スタッ!」
って音がした。この音は…。や、やっぱりぃ! ボス恐竜さんが、私の機体の上に乗っかってる…。
モニターに映っていた空と口の割合が
空が8で口が2だったのが、割合が逆転するのにそんなに時間かからなかった。
あえて言おう…、
「私、食べても美味しくないから!」
大切な事なので二回言いました。
もう駄目! 食べられるぅ! モニター見てられない、と目を瞑り覚悟を決める。
……
…
あれ? [ALERT]が出ない?
恐る恐る目を開くと…。
モニターいっぱいに広がっていた口が遠ざかって行く…?
「ギャオ…。ギャオ。」
悲鳴と思える鳴き声を上げていた。
「ドドォォォォォ!」
多くの動物が一斉に駆け出す様な音が響いた。
何事かと周りを見ると、恐竜さん達が同じ方向に駆け出していた。
「な、何?」
機体を起こすと。
でっかい赤い山が見えた…。
その山は四本足で、爬虫類の鱗がびっしりにって言うか爬虫類そのまんまだし。背中に大きい蝙蝠の羽みたいなやつ。で、長い尻尾(当然、爬虫類の鱗付)、そして恐竜よりも凶悪な顔には角が生えていた。
「えっ…。」
副部長さん。
「げっ。」
小南先輩。
「あっ。」
百地先輩。
「なんじゃこりゃー!」
ちょっと下品な私…。だって、だって、だってなんだもん…。
一瞬思考停止から
「あれって、ドラゴンですよね…。」
と、超メタな発言してた。
暫しの沈黙。
「た、たぶん…。」
副部長さんが答えてくれた。
「まさか、こんなシナリオだなんて…。」
小南先輩もメタな発言。
「こ、これは…。」
「知っているの百地さん?」
副部長さんが聞いた。
「世界を征服しようとしている邪悪な竜の王様に、『世界の半分と引き換えに仲間になれ!』と聞かれるのかも…。」
『ズルッ!』椅子落ちしちゃったよぉ!
「それは無い無い…。」
小南先輩が否定した。
「だって、あれはどちらかと言うと…。皮とか鱗とかを剥ぎ取るタイプだし。」
確かに、納得しちゃった。
とか言ってたら、加えていたボス恐竜さんを丸飲みにして、こっちをギロリって睨んだ。
き、聞こえた!?剥ぎ取るって言ったの…。
体の大きさに見合う大きい目に睨まれ慌てながら、マーカーを合わせた。でっかいから合わせるのは楽だけど…。
トリガー引くと注釈線と解説がいっぱい出た!
えっと…
名前は…、っと…
・名前:【炎竜フレイム・ドラゴン】
そのまんまだ!
・レア度:SS
レア度って…。それから…。
・特徴:口から高熱の火炎弾を吐く。
そうだと思ったよ…。
だって、今ドラゴンが一回口閉じて上に向く様にタメを作ってから、こっち向いた…。で、口元から赤い炎がチョロチョロと噴き出している…。
これは絶対に火炎弾を吐くに違いない!
んで、解説読んでる場合じゃないぃぃぃぃぃ!
「散らばって! 固まったら駄目っ!」
副部長さんが指示の悲鳴を上げる。
皆の機体がバラバラの方向へと駆け出す。確か『蜘蛛の子を散らす』って言うらしいけど、まだ見た事は無い。
『ボゥ!』とドラゴンが口から火炎弾を吐き出した。さっきまで私の機体がいた場所が『ちゅどーん!』と大爆発して辺りが燃え上がる。
「あんなのに当たったら…。」
恐竜さん達にダメージ受けてるから、残りの耐久力でどこまで耐えられるのか…。もしかしたら、一発で行動不能になるかもだし。
何とか身を…。身じゃなくて機体を隠せる場所へ潜り込んだ。と、言っても大き目の木の陰だから盾にはなりそうにないけど…。
「すーっ、はーっ。」
深呼吸したら、ちょっと落ち着いた。
ん? あのドラゴンってアレだよね…。
「あのドラゴンってラスボスですよね…。」
「たぶん、そうです。」
副部長さん。
「じゃあ、倒さないとですか?」
……。
しばし沈黙が流れ…。
「そ、そう言う事になります…ね。」
思考が止まっていたのか、少ししてから副部長さんが答えた。
「やっぱ、そうかぁ…。」
嫌そうに小南先輩。
「相手にとって不足無し!」
百地先輩は殺る気みたいだ。
「各自、ドラゴンの顔の正面は避けて攻撃。」
副部長さんの指示。
「了解!」
と、三人の声が重なる。
木の陰から少し機体を出してライフルを
「ダダダーッ!」
と、撃つ! 大きい的だから簡単に当たった!
間違いなく胴体の背中辺りに命中した…。その場所から撃った弾の数だけ火花が上がった。
「ゲゲゲのゲ!」
そう背中あたりを覆っている鱗に弾が全部弾かれた…。唖然として、
「は、弾かれました。」
と、見たままを口にしていた。
「私達の武器が効かないって事?」
と、副部長さん。
「いや、それはないとかと…。」
小南先輩が否定した。
「どうしてですか?」
「だって、あれは剥ぎ取るタイプのドラゴンじゃないですか…。だったら、何処かに弱点がある設定のはず。」
メタを超えたメタメタな発言だ。
「なるほど、一理ありますね。」
メタメタ発言を肯定した。
「それなら…。」
と、百地先輩が割り込んだ。
「たぶん…。[逆鱗]じゃないですか?」
「[逆鱗]かな? あのドラゴンはどちらかと言うと画数の少ない『竜』で、画数多い方の『龍』に『逆鱗』があるイメージなんだけど…。」
小南先輩の仮説は、超説得力あるな。
「そう言われれば、そうですね。」
百地先輩も説得された。
「だとすると…。鱗に覆われていないのは…。目と口の中ぐらい?」
副部長さん。何かちょっと可愛そうだけど…、やらないと私達が可愛そうになりそうなのでやるしかない!
「とりあえずは、武器が効きそうな部位を攻撃。発見次第に、皆で総攻撃しましょう。」
「了解です!」
揃った!
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