第53話 ボス

 私に起きた事に気が付いた皆は、


「あっ!」

 副部長さん。

「ゲッ!」

 小南先輩。

「えっ!」

 百地先輩。


 同時に発した。


 モニターに[ALERT]が出まくる! その表示を読んで

「ゲゲゲのゲッ!」

 シールドの耐久力がごっそりと無くなった事を知った。


 直ぐ様起き上がり、私が見たものは…。


 さっきの恐竜さんより一回り大きい、でっかい恐竜さん。色もちょっと違う…。

 リーダー?

 …。

 あっ、恐竜さんだと[ボス]だった。とりあえず[ボス恐竜]さんでいいか。なんて呑気な事を思っている場合じゃないのに。


 あれっと気が付き、思った事をそのまま口にしていた。

「私達って、恐竜さんに誘い込まれた?」

「みたいですね…。」

 独り言に副部長さんが答えた。


 ボス恐竜さんは起き上がった私の方へ、ゆっくりと向く。そして、巨大な口を目一杯開き尻尾を『ブンブン』振り回している。

 さっきのは、多分あの尻尾だな。運良くシールドに当たったけど、モロに当たったらどうなってたか…。


 ボス恐竜さんが、牛が突進の前にやるみたいに右脚で地面を数回掻(か)く。

 それを見て突進してくると身構えた。一気に緊張が高まる。


 ボス恐竜さんが

「ギャオォォォォォ!」

 大気を揺るがす咆哮を上げた。

 すると、あちこちの茂みが『ガサガサ』して恐竜さんがいっぱい飛び出して向かって来た。


 それは開戦の合図だった。

 始まる。

 パンツァー・イェーガーvs恐竜の群れ

「各機、味方の機体に注意!」

 副部長さんが怒鳴る様に指示を出した。



 ボス恐竜さんは、私と対峙しながら威嚇。私の後に何匹か回り込んでるみたいだけど…。目の前にボス恐竜さんがいると振り向くわけにもいかず…。

 でも、このままの状態はこっちが不利なのは確定だし。

 

「えい!」とばかりに、ボス恐竜に向かってライフルを撃つ! が、ひょいとかわされる…。

 やっぱり、銃口の動きを見ててかわしてる。


 ならば!ミサイル!

 !?

 トリガーを引く指が止まった…。射線延長上に皆がいる! 危なかった、撃つところだった。ボス恐竜さんに当たらなかったら、ミサイルは皆に飛んで行くところだったよ。

 さっき副部長さんが言ったのはこの事だったのか…。このボス恐竜さんは特に頭が良いみたいだ。


 ボス恐竜さんから遠ざかる様にゆっくりと下がる。丁度、皆から離れる感じになって、見えたのは…。

「ヤバい!」

「ダダダッ!」

と、ライフルを撃ち込む!


「ギャイン!」

と悲鳴を上げ、『ドサッ!』と落ちた。


 当った! 初めて当ったよ。そ、そうか。こっち見てなかったから当ったんだ。

「気を付けて下さい。恐竜さん達が木の上にもいます!」

 そう、私が見たのは木の上から襲い掛かろうとしていた恐竜さん。

「木登りも出来るとは何とも。」

 小南先輩が少し驚いた様に言った。


 もしかして、さっきの「ドスン!」っ音はボス恐竜さんが木の上から降りた音?


 下がって、少し良い位置取りができた…。気がしたけど…。

 この位置って私だけが皆から離されたかも…。チームの分断までやるの恐竜さんは?

 それだと、ヤバいかな?


 あっ…。でも、この位置だと他の機体に襲いかかる恐竜さんは私を見ていない…。その分、私が狙わないから襲い易そうだけど…。とか、考えてた…。

 …。

 駄目! 駄目! 考えても仕方ない、今やれる事をやろう!


 こっちを見てない恐竜さんに狙いを付けてトリガーを引く!


「ダダダッ!」

と火を吹く銃口!


「ギャイン!」

と喚く恐竜さん!


 やっぱり間違ってなかった。こっちを見てない恐竜さんには当たる。


「ドサッ!」

 目の前に恐竜さんが落ちて来た。副部長さんの機体と銃口がこっち向いてる。

 流石、慣れている…じゃなくて、百戦錬磨だけあって私のやっている事を解ってくれて援護してくれた? じゃあ無くて私がやる前から分かってたのかも…。

 それならと、調子に乗って撃ちまくる!

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