第55話 狙い

 『何処狙おうかな?』と考えていると、百地先輩がダッシュで接近して行った。あれに接近戦を仕掛ける!?

 小南先輩は、森の中に消えてた。狙撃場所探しに行ったのは明らかか。

 副部長さんは、ドラゴンの正面を避ける様に右に回り込みながらガトリングガンを撃ち込む。

 じゃあと、私は副部長さんと反対に左に回り込みながら攻撃。


 ドラゴンの顔辺りで、百地先輩が接近戦を始めた。

 『カキーン!』『カキーン!』斬っては離れのヒットアンドアウェイ。

「流石に硬いですね。ほとんどダメージ通ってないと思われます。」

「それと[逆鱗]らしきものは見当たりません。」

 流石、百地先輩。[逆鱗]探していたとは。


 『ズキューン!』と、森の中から響く。そして、ドラゴンの顔で『カキーン!』と火花が散る。

「思ったより、顔動いてるな…。微妙に外れる。」

 でっかいから当り易いかと思っていた狙撃だけど…。難しいのか…。


 回転する砲身が、連続で撃ち出す弾丸と同じ数だけ火花が散る。

「それっぽい所を撃ってますが…。当って場所は見当たらないですね。」

 微妙な距離を保ちながら攻撃をする副部長さん。


 私も撃ってるけど、ここぞって場所にはヒットしていない。


 そして、ドラゴンの『ボゥ!』と火炎弾。直後『ちゅどーん!』と燃え上がる大地。

 反撃の『ダダダーッ!』。私達のギリギリの戦いは続く…。


 ちらっと見たモニターに表示されている残弾が約半分か…。集中力も切れてきた…。ヤバイな…。

 その時ドラゴンが火炎弾のモーション。

 正面を避ける様に動く私達…。

 それを見透かした様に、火炎弾のモーションを止めて右周りに反動を付けながら尻尾の薙ぎ払い攻撃!

「あっ!」

と、小さい悲鳴を上げた副部長さん。

 回避で回り込んでいた副部長さんの機体が、モロに尻尾を喰らい『ガィーーーーン!』という音と共に吹っ飛んだ!

 機体は木を薙ぎ倒して仰向けに倒れた。


 ひっくり返っている副部長さんの機体の方へ、ドラゴンがゆっくりと近付いて行く。一歩が大きいから直ぐに近くまで行った。


 目の前で止まると、右腕…違うか? 四本足だから右前足かな? 今はどっちでもいいけど。とりあえず、右前足にしとくね。

 それを残りの三本の足で支える様にして、高く持ち上げた。


 足の鋭い爪が高々と上がり、今にも振り下ろしそう…。ヤバイィィィィィ!


 こうなったら!

「当たれぇぇぇぇぇ!」

と、ミサイルを纏めて右前足に撃ち込んだ。


 着弾寸前に、更に振りかぶった! そのお陰でミサイルは足を外れて、ドラゴンの胸(だと思う)に当たった…。

「ギャオーン!」

 ん? 今のは苦しそうな咆え方? その証拠に体勢崩して地面に『ベチャ!』ってなった。


 その隙きに副部長さんは機体を起こして脱出した。


「日向さん。ありがとう。」

「脱出できてよかったです。」

「で、皆さん今の見ましたか?」

「バッチリ!」

 小南先輩がモニターの小窓でサムズアップ。

「勿論。」

 百地先輩…。その人差し指と中指を立てて親指側を顔に向けたポーズは、忍者の漫画とか映画でよく見る構え。

「どうやら弱点はお腹側で、いつも地面に向いているって事みたいですね。」

「道理で…。でも、お腹側だと狙撃で狙えないよ。」

 確かに、小南先輩の言った通りだ。

「それなら何とかなると思います。」

 言うが早いか、駆け出す百地先輩。

「頃合いで、合図出します。」

「了解!」

 残りのメンバーは武器を準備した。



 『ベチャ!』ってなっていたドラゴンがゆっくと体勢を立て直した。


「ん?」

 さっきと何か違う…。

「あっ!ドラゴンがさっきより黒くなってませんか?」

「本当だ! 身体が赤黒くなってる。」

 副部長さんも驚いた。

「あれは…。」

「知っているの? 小南。」

 百地先輩がお約束の台詞。

「あれは、たぶん…。剥ぎ取るタイプだから、[怒り状態]だと思う…。」

「怒り状態ですか…。」

 副部長さん。

「凶暴になって攻撃力が上がるはず。」

 そうなんだ、かなりヤバイ状態だ。

「逆に潮時かもですね。」

「えっ、諦めるんですか、百地先輩。」

「あっ…。[潮時]って本来は[チャンス]って意味なのよ。」

「知らなかった。」

「漁師さんが、潮が良い時で魚が捕るって事らしいわよ。」

「なるほど…。」

「凶暴化しているなら、こっちの挑発に乗りやすいはず。」

と、百地先輩の機体が加速する。


 それを観たドラゴンが、

「ギャオォォォォォ!」

と、咆える。


 そこへ百地先輩の機体が到着するや否や、直ぐ様白兵戦を仕掛けた。


 剣撃が何度もドラゴンの硬い鱗に弾かれる。


 警戒しているのかドラゴンは、低い姿勢のままに前足で百地先輩の機体を攻撃していた。

 機体のスピードを活かして、ドラゴンの攻撃を交わす。

 交わす。

 流石、百地先輩だ。


 と、交わした瞬間に前に出てドラゴンへ接近して見えなくなった。

「いきます!」

の合図と共にバック走行でドラゴンから離れた。


直後、

『ちゅどどどーん!』

 お腹の下が大爆発。


 爆発から逃げる様にして、体を起こすドラゴン。

今のは…。手投弾?


「狙い撃つよ!」

 森の奥から撃ち込まれる弾丸。

「フルファイアー!」

 全身から、ありったけの弾丸とミサイル。

「当たったぇぇぇぇぇ!」

 ライフルとミサイルを目一杯撃ち込む。

 三機が持てる火力で攻撃。


 一斉攻撃を受けたドラゴンが爆煙に包まれ見えなくなる。


「や、やった?」

 つい、口に出た。

「日向ん…。」

 小南先輩が意味ありげに。

「?」

「それ、倒してないフラグだ…。」

「あぁぁぁぁぁ!」

 やってしまった!フラグ立ててしまった。って事は…。


 やっぱり、爆煙の中から巨体が出た!

『ドスン!』

と、四つん這いに戻った。

「す、すみません。フラグ立てちゃいました。」

「いや…。冗談だから。」

 否定した小南先輩。


「もう一回いきます!」

 百地先輩が再度仕掛ける。

「さっきと同じ攻撃なら、あと一回です。」

 副部長さんは残弾を言っているんだな。私の機体も全力攻撃なら後一回無いぐらいだから…。

「私も後一回が限界〜。」

 ちょっと呑気に言う小南先輩。

「了解です。私も手投弾が後一回です。」

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