第27話 一戦

 セットアップ。

 その位置からレーダーの反応は無しと、言ってもそれ程は索敵はできない。通信も近距離に設定されているので、副部長さんとは繋がらないか…。

 キョロキョロと地形を確認する。


 あの辺りが狙撃の潜伏に向いているから、撃たれない様に回り込んで、接近して行く作戦にした。

 多少の起伏のある平原を抜けると、森が見えた。もしかしたら、森の中から狙撃もあり得る。

 手前におあつらえ向きの大き目の岩がある。

 慎重に移動して岩に付ける。


 その瞬間!

 モニターの下から白くなり、スピーカーが『ドドドーン。』と唸る。

 [ALERT]が鳴り、脚のダメージを警告する。

 そして、炎と煙がモニターに映る。


 地雷!?

 機体が爆発の反動でヨロヨロと岩陰から出る。

 『ズキューーン!』

から、

 『ドウ!』

と、胴体のダメージを知らせる[ALERT]が点灯する。

「撃たれた!」

 ヤバい。ちらりと見えた。あの場所なら!

 慌てて移動させる。


 そして、またモニターが白くなり爆発音が流れる。

「ここも!」

 よろけたところに、また弾丸が飛んで来る。

 ここもヤバい! 森へ避難すれば!


 もう少しで森へ入れる。それが油断だった。


 『ヒュン!』

と、風切音。

 『ズボーッ!』


 小さな音と共に何かが当たった。

 何か棒の様な物が刺さってた…。これって【矢】だよね!?

 何処から?

 弓矢だと、発射音は拾えない…。発射の光(後で、マズルフラッシュって言うって知った。)も見えない…。


 森へ転がり込む様に入り、木の陰に隠れた…つもり。

 確認すると結構ダメージ出てる。

 どうしようと思っていると、

 『ズキューーン!』と言う音と共に隠れている木の幹に弾丸が穴を開けた。


 狙われている。意識が狙撃の方向に向いた。その時『ズボーッ!』と矢が刺さった。


 今、一瞬レーダーに映った。百地先輩だとすると、撃つ瞬間だけ近付いて直ぐに下がってるんだ!

 流石、百地先輩…。ぶるぶると頭を振り集中する。今はそんな事を考えている場合じゃない。


 これ以上のダメージは…。兎に角、狙われない場所へ。

 隠れている場所から動いた瞬間に、また『ズキューーン!』と撃たれ機体が動かくなくなった。当然、コックピット内は[ALERT]の点滅と音でいっぱいです。


 さっきのは何だったんだろう?

 私が狙撃を警戒して隠れた場所に地雷らしきものが仕掛けて合った。何であんなに場所に?


 考え中。


「あーっ!」

 思わず声が出た。私が狙撃を読んだのを読まれたんだ。狙撃されない様に動くと予想して、設置していたんだ。

 腰の辺から背中を抜け、更に盆の窪(ぼんのくぼ)を駆け抜けたブルブルは頭達した。

 『ワタシ、ワクワクが止まらない!』

 これが、対人戦でチーム戦なんだ!

 次から次からへと、ゾクゾクする感覚が止まらない…。それが、パンツァー・イェーガーなんだ!

 一人で悦に浸っている。


 そこに駆け付けた副部長さん。二体一では流石に分が悪く、健闘むなしくやられた。


 私のせいだ! 私が下手で狙われたから…。

 小南先輩と百地先輩の二人に良いように狙われたんだ。二人に攻撃された…。

 二人に…。


 考え中。



 インターバルの合間。


 モニター越しの二人の会話。

「ねえねえ。百々(もも)っち。」

「何でしょう? 小南さん。」

「日向さん…。何か余所余所しいな…。」

 少し考え、

「そうだ! 今から、『日(ひ)なっち』って呼ぼう!」

 自画自賛し、

「我ながら、良いセンスだ。うんうん。」

「私の事を『っち』って付けて呼んでいるので被ってないですか?」

「あっ…。被りは良くないな…。」

 また、考え、

「う~ん…。『日向(ひなた)ん』っとどうだろう?」

「ちょっと可愛いかもですね。」

「やっぱ、私のセンスは最高だな。」

「で、本題は何でしょう?」

「あっ、忘れてた。さっきの戦闘を経て、日向んはどうするだろう? って聞きたかった。」

「そうですね。私に分かるはずはないと思いますが…。」

「そりゃあ、そうだけど…。」

「でも…。」

「でも?」

「何かしらの事をしてくると思います。」

「そうだね。考えただけでワクワクさせるね。」

「同感です。私も日向んが何をしてくるか楽しみです。」

 百地の『日向ん』はちょっと恥ずかしそうだった。


「さっきの作戦は使えないと思うので、裏の裏を付きますか? それとも、裏と見せかけて表で行きますか?」

「それを悩み中なのよ、百々っち。」

「後は、横って作戦もありますが。」

「そうだねぇ。横とかやりたいんだけど…。」

「だけど?」

「手の内を今の内から全部、日向んに見せていいのか? って事…。」

「それはありますね。日向んなら、見せれば見せるだけ考えますから…。」

「そうなんだよね。先輩としては嬉しい反面、先輩の威厳(いげん)とでも言うのか、負けられないと言うのも本心だし。」

「解ります。私も一人のパイロットとしは、日向んは恐ろしい存在だと思っています。」

「どうしよう?」

「どうしましょう?」

「とりあえず、さっきの作戦で近接信管爆弾のポイントを少しずつ変えていく、ぐらいかな?」

「解りました。その作戦でばら撒きます。」

「頼んだよ。百々っち。」

「はい。ですが、上手く仕掛けさせてくれるかは不明ですが。」

「だね。後は野となれ山となれかもだね。」

「それも、作戦ですね。ふふふ。」

「ははは。」

と、二人共に笑ったかに思えたが、目は笑っていない。そう、二人はパイロット…。パンツァー・イェーガー乗り!

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