第28話 二戦

「リセットします。」

 美星先輩の合図と共に、モニターの風景が格納庫に変わる。


 リフトアップされ、次の戦闘が始まった。


 セットアップ直後に一気に加速させる。

 『多分、今私のやる事は、狙われる事!』

 最大速度で移動しながら、狙撃のポイントに当たりを付ける。

 このステージだと、高低差は少ないから、森からの狙撃がメインになるはず。

 先程と似た感じで、隠れるに最適な場所がある。そこに一直線に向かう!


「来た来た。どうするかな? 百々っち。」

「とりあえずは、先程と同じ様な場所に仕掛けはしておきましたが…。」

「引っかからないだろうね。」

「多分。」


 目的の場所の直前で方向転換! 一気に、遮蔽物の無い場所へ出る。


『ズキューーン!』

からの、今度は、

『カーン!』


 来た。でも、今回はシールドで防御をしている。さっきは、シールド使う間も無かったし、慌てて忘れてた…。そういう事にしておいて…。


 今のだと、森から! ならばと、森へミサイルとライフルを撃ち込む。

 でぇ、多分と上半身を右へと向ける。


 レーダーに反応が出た! やっぱり、この機体の右側に回り込む位置に百地先輩がいた。左側のシールド効果範囲外に来ていた。

 こっちもぉ! ライフルとミサイルを撃ち込む!


「流石ですね。やっぱり読まれてましたか。」

 悔しい様な、嬉しい様な表情を浮かべる百地は回避行動をとる。


 更に森に近付く様に回避。隠れるのにいい場所が見える。

「そこぉ!」

 そこに、ミサイルを撃ち込む…。

「お願い、爆発して!」

 祈る様に小さく口にする。

『ドドドーン!』と、ミサイルの爆発よりも大きな爆発が起きる。

「やったー!」

 爆煙の中に突込み場所を確保する。


「今のは、完全に読まれたね。百々っち。」

「想定内です。」

「次は…。」

と、言いかけた小南は、慌てて狙いを付ける。


 隠れた瞬間に、その場を飛び出し、今度は森へと向かう。

「百地先輩はまだレーダーの圏外と…。」


 『カキューン!!』

 シールドがカバーしていない部分に弾丸が命中する。

 『小南先輩、やっぱり凄いな…。』

 その瞬間に機体を左へと滑らせ、ライフルとミサイルを反撃と森へ撃ち込む。


 森へ入れると狙っていた場所は、目の前…。

 足元が大爆発!

 『ここにあった!?』

 完全に不意を付かれた! けど、今までのダメージの蓄積が少ない分、前回よりましなはず。


 爆煙の中を右へと向きを変え進む。

 こっちは百地先輩が近付いているはず。

 …。

 げげっ、私の背後から近付く機体がある。回り込んでいたのか…。


「まだまだ!」

と、矢を放つ百地!


『ズボーッ!』

 当たった。でも、そろそろだと思うんだけど…。


 『ちゅどどどどーん!』と森が大爆発し、炎と煙を上げる。


「あちゃー。いつの間に…。もう少し大丈夫だと思っていたのに。」

 小南のコックピット内を[ALERT]の文字と音がいっぱいし、[LOST]を知らせた。


 副部長の少し離れた位置から放たれた、フルファイヤーが森と共に小南の機体を焼き尽くしていた。


 その後、百地先輩の攻撃でダメージが蓄積されていた私の機体は動かなくなり、副部長vs百地先輩になった。

 何とか、副部長さんのミサイルが百地先輩を捉えたけど、反撃の矢が副部長さんに命中していた。

 痛み分けって奴になった。


58


「すみません。もう少し大丈夫だと思ったんですけど。」

「今のは作戦?」

「私が、二人から狙われれば副部長さんがフリーになり易いかなと。」

「じゃあ、わざと狙われてたって事?」

「はい。やられない様に、狙われるって作戦でしたけど…。上手くいかなかったです。」

「なるほど。で、次はどうする?」

「えっと、えっと…。」

 考えるモードに入る。


 爆弾の位置といい、狙撃のタイミングといい二人は凄い…。

 ん? 何が、凄い?

 爆弾の置く位置が凄い?

 それとも、狙撃が凄い?

 ……。

 …。

 そうか! 判った。


 二人が凄いのは、連係だ。

 仕掛けた爆弾から狙撃。狙撃からの矢の不意打ち。お互いがタイミング良く繋がっているんだ。

 対抗するには…。こっちも連係! は、無理だな…。多分、長い時間かけてお互いが解っているからできる技なんだ。

 じゃあ、できるのは…。


「副部長さん。」

「何?」

「えっとですね。」

 ゴニョゴニョと作戦会議。


 副部長さんが私を使えば勝てないまでも、そこそこ戦えるんだろうけど。何も言わないのは、私にやらせるって事なんだろうな。身勝手な解釈かもしれないけど…。



「やっぱり、考えて来たね。」

「ですね。小南さんやられましたから。」

「いやー。副部長が、接近するまでもう少しかかると思ってたんだけど、日向んが撃ち易いところに居て、気を取られぱなしだったよ。」

「確かに、こちらも同じでしたから。」

「どうする? 折角二人だからアレやる?」

「アレは、この機体ではちょっと…。小南さんもやり難いのでは?」

「だね。アレは止めとこう。何か、良い作戦ある百々っち?」

「良いかどうかは、私では判断できませんが、作戦ならありますよ。」

「乗った!」

「まだ、何も言ってませんが。」

「ほら、私は作戦に組み込まれるのは得意だけど、考えるのは苦手だから。」

と、笑っていた。

「部長も言っていたでしょう。苦手だからやらないで良いなんて事はないって。」

「それを言われると。次は考えるから、ねっ、ねっ。」

「仕方ありませんね。では…。」

 ゴニョゴニョと、こちらも作戦会議。


「なるほど! その手があったか。」

「でも、小南さんの苦手な作戦ですね。」

「そこんところは、何とかやってみるよ。」

「では、それで。」



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