十種神宝
「僕が少女を追いかけた理由ですが、少女が気になる事を呟いたからなのです」
「気になること?」
「とくさのかんだから。そう、少女が呟いていました」
「とくさの、かんだから……? ………………あぁ――――――――――!!」
突然、大声を出した櫛角別に三人は驚いて、肩をびくっとさせた。
「あ、兄上? どうされました?」
「そうだ、
「前に、忘れているような気がする仰っていましたが、もしかしてそれですか?」
「そうそう! いやー、すっきりしたよ!」
そう言って櫛角別は、爽やかな笑顔を浮かべる。
以前、櫛角別の館で三種神器の話をしていた時、彼は何か忘れているような、と言っていた。
それが十種神宝のことだったのだろう。。
「兄上、その十種神宝とは一体……」
「話が長くなるけどいいかい?」
頷くと、櫛角別も頷き返した。
「僕の記憶が正しかったら、たしか十種神宝は、
饒速日命はそれらの神宝に守られながら、巨大な
十種の神宝の名前とその効果は。
「そんな物があるんですね……」
小碓はへぇ、と言いながら呟く。
「特別な力を持った玉……その十種神宝にはそれが四つもありますね」
「生玉、足玉、死返玉、道返玉。犯人がその内の一つ……あるいは全てを手に入れようとしている……可能性はない、とは言い切れないね」
「あのー……話を割ってすいませんが」
八柳がおそるおそる口を開く。
「どうしてそれが、大王一族の墓にあるって思ったんですかね? そういうのって、祀られているか大切に保管されているか、どっちかと思うんですけど。そもそも、なんでこの倭国にあると思ったんでしょう?」
間を置いて、櫛角別が答える。
「十種神宝の行方は分からない。存在すらしないんじゃないか、と言われているんだ。
もしかしたら、饒速日命の子孫である物部が大王に献上したのかもしれない。その後、大王の墓に一緒埋葬されてそのまま忘れ去れている可能性もないとは言い切れないね。
だから犯人は、行方知らずなら墓の中にあるかもって思ったんじゃないかな?
十種神宝が保管されているという情報も、犯人は見つけられなかったのかもしれないね。この辺で十種神宝が保管されている可能性が高い場所といえば、纏向日代宮ぐらいだけど、あの警備を突破することはまず無理だろうね。
だから、最終的に御墓を荒らしたってことかな? 倭国にあると思った理由……は分からないけど、そうだねぇ。犯人は倭国にこだわる理由があったとか?」
「こだわる理由……ですか」
「まぁ、全て想像でしかないけどね」
肩をすくめ、櫛角別は目を細める。
「女の子、か……その女の子、十種神宝について、何か知っているのかもね。目立つ格好だから、こっちにでも探しておくよ」
「ありがとうございます、兄上」
「どうってことないさ。でも僕は、纏向日代宮に行って帰ってくる間しか外に出ない事が多いから、あまり期待はしないでおくれ」
さて、と櫛角別はゆっくりと腰を上げた。
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