離れた場所で

「あれが、おじい様が仰っていた白鳥の子か……」



活目入彦の墓から少し離れた所にある林の中で、少女が興味深そうに墓の前にいる一人の少年を覗き見していた。


 栗色の横髪を耳に掛けると、左耳に付けている常盤色の勾玉の耳飾りが揺れる。


 少女の肩に乗っていた、白い小鳥が羽を羽ばたかせ、少女を覗き込む。



「姫、興味アル? アル?」


「少しだけ、な。だが、そこまではない」



 それに、と少女は付け加える。



「わらわの目的には関係ないことだ。気にする程でもない」



 言い切った少女に、小鳥は首を傾げる仕草をする。



「ナイナイ?」


「あくまでもわらわの目的は、この地にあるという件の玉を探し出すことだ。白鳥の子には関係ない」



 落ち着いた、というより感情が欠けているような淡々とした声音で言い捨てた。



「玉?」


「お前……知らないでわらわに付いてきたのか」



 呆れた風に溜息をつく。



「姫、心配、心配!」


「わらわが心配というだけで、付いて来たのか。実にお前らしい」


「エッヘン!」


「褒めてないぞ」



 胸を張る小鳥に淡々と言いながら、少女は小鳥の喉を撫でる、小鳥が気持ち良さそうに鳴いた。



「とりあえず、あの玉が悪用される前に回収せねばならぬ」



 あの玉は特別な力を持つ。それは、玉の効力は人が求めても得られないものを得られるもの。


 身勝手で傲慢で、すぐに裏切り、親しくしていても自分に害があると判断すれば、すぐに裏切る。そして、よってかかって弱き者を始末しようとする。そんな化け物を内で飼っている。それが人間という生き物だ。


 だからこそ、あの玉を回収しなくてはならない。悪用される前に、なんとしても。



「行くぞ。あれを人間の手に渡すわけにはいかぬ」



 少女は踵を返し、林の奥へ消えた。

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