第4話 白界の中心
「なにか感じるものはあるか?」
馬車から下りると、第七十五のおっさんが俺に問いかける。
「なんだかよく分からねえけど、ここがこの世界の中心なんだろ? そんな気がする」
「そのとおりだ」
自分自身でも何故かはわからないが、この真白で何の目印もないこの場所が白界の中心であることが感覚でわかった。
「神の使いであることの証拠さ。ただの魂なら感じることはできない……じゃ、次は扉を開けてもらおうかな。ちょっと念じてみな。『門よ開け』って感じでな」
俺はおっさんのいうとおり、心の中で念じた。すると、どこからか光の粒子が集まってきて光の門が出来あがった。きれいだな、と柄にもなく思ってしまった。
「最初にしては上出来だ。そんじゃ神界に行くわけだが……アティーナ様をイメージしてみな。そのイメージに向かって歩けばアティーナ様の元にたどり着く」
「アティーナ様をイメージ? そんな見たことない神様をイメージ出来るわけねえだろ。そんな適当なことでたどり着けるのか?」
「アティーナ様を含め、神たちは実体を持っていない。俺たち神の使いがイメージした姿で顕現して下さる」
「じゃあ、オレがむちゃくちゃ色っぽいアティーナ様をイメージしたら、その姿で出て来るってことか?」
「理論上はそうだな。だが、お前そんなもん想像してるか?」
「いや、想像してないよ。テレビで見たギリシャ神話の女神を想像してる」
「お前、馬車の中でもそんなこと言ってたな。そのテレビとかギリシャってのは何なんだ?」
「え? 知らないのか、おっさん」
「ああ、聞いたこともない。きっとお前が元々居た世界にあったものなんだろう。忘れないようしっかり記憶しておけよ」
テレビ、ギリシャ、そう言えばおっさんと馬車の中で話したが、電波やコスプレと言った言葉も知らなかった。俺が居た世界にしかないものだったのか?
「そんじゃ、取りあえずここでお別れだ」
「付いてこないのか?」
「あん? なんだ、付いてきてほしいのか?」
「お断りだ」
「はっは! 最後まで生意気だな。まあ、縁があれば、またこの白界でともに働くことになるだろう」
「そういえば、アティーナ様のところに行く理由を聞いてないぞ。何を話したらいいんだ?」
「それはアティーナ様のところに行けばわかるさ」
「適当だな。ま、いいや。じゃあな」
オレはおっさんに向かって少し手を挙げて挨拶をすると、門をくぐり抜けた。
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