第9話 マジかよ!?

鉄朗「へっ……?

そういや、そんな柄だったかな…?


え、沙和、何で…」


沙和「あの…あのね、この前鉄朗くんちにお邪魔した時…

クローゼットの端から、パジャマ…ちょっとはみ出してるの、見えちゃったの…」


鉄朗「え?え?えぇーっ!!??

だって俺全然気づかなかったけど…あの後も…え、マジで!?」


沙和「うん…鉄朗くん多分急いで片付けたんじゃない?

それで、私が見つけた後、とっさに指で奥に押し込んじゃったし…」


鉄朗「えーっ!?」


沙和「私も似たようなフワフワのパジャマ持ってるし、あ、これ絶対女物だよなー、ってピンと来て…

何で鉄朗くんの家にあるのかなーって、動揺して…」


鉄朗「………」


沙和「で、鉄朗くんに直接訊くのも怖くて、かと言ってこのまま見なかったフリして鉄朗くんの家にいるのも、嫌で…

とにかく、この場から逃げたい!って気持ちになって…

それで、咄嗟に…」


鉄朗「咄嗟に…ワンピースをディスった?」


こくんとうなずく沙和。


鉄朗「な……えーっ!!??

え、何で…何でその場で訊いてくんねぇんだよ?

そしたらすぐ…」


沙和「だってさあ!訊いちゃったら、本当のことか嘘のことしか返ってこないじゃん!

本当のことも嘘のことも聞きたくなかったんだよ!

実は本命の彼女がいる、とか告白されるのも怖いし、適当に嘘つかれてごまかされるのも嫌だしさ!」


鉄朗「本当のことも嘘のことも何も…!

真実はこれじゃねーかよ!

腐女子姉貴の、小汚えパジャマ!!」


沙和「小汚いって(笑)」


鉄朗「何だよ…!こんなことになるなら、あのクソ姉貴のクソパジャマ、ソッコーで燃えるゴミの日に出してやるんだったぜ!」


沙和「いやいやいや…(笑)」


鉄朗「あっ…、信じてない?

あの、何なら(嫌だけど)姉貴、紹介するし…

あ、子どもの時の写真とか実家から…」


沙和「いやいや、大丈夫、信じるよ。

あ、お姉さんにはぜひお会いしてみたいけど。


そっか…私の勘違い、だったんだね。本当に、ごめんなさい…」


鉄朗「あ、いや…、

俺の方こそ、ごめん!


だって、そうだよな…

一人暮らしの男の部屋に、女物のパジャマ見つけたら、そりゃ浮気疑うよな。

しかも俺、姉貴がいることだって言ってなかったわけだし…

勘違いさせて、不安にさせて、本当にごめん!」


沙和「鉄朗くん…そんな、私の方こそ、ひどいことたくさん言って、嫌な気持ちにさせたよね。

ごめんね。」


どちらからともなく、微笑み合う二人。


鉄朗(……お、もしかして、これで一件落着…?


結局のところ、沙和は女物のパジャマを見て動揺し、しかしそれを言い出せず、咄嗟にワンピースをディスって部屋を飛び出していった、というのがあの日の真相だったわけか。


咄嗟にワンピースをディスる、という部分が斜め上すぎて、常人の俺にはすんなりとは理解できんのだが、つまりはそういうことだったのか…。


あれ、でも結局…?)


鉄朗「あの、沙和、一つ聞きたいんだけど、ワンピースのことは、結局その、どう…?」


沙和「ああ、ワンピースに関して言ったことは、全部本当に思ったことだよ。

ていうか、ぶっちゃけワンピース全巻+フィギュアに引いて、出て行ったっていうのも、50%くらいあるしねー(笑)」


鉄朗「えっ、えぇっ!?50%も…!?」

(浮気の疑いとワンピースが、まさかのイーブン!!??)

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