第7話 迷宮入り

鉄朗「えーっと、まぁその…

男女の違い、でごまかそうとした俺もちょっと悪かった。

まぁとにかく、俺は…ほら、結構本も読むし、(←二度目の本読むアピール。)マンガは、とにかく分かりやすく、明るく楽しく読めるやつがいいのね?

だから、それにワンピースがぴったりなんだよ!

仕事毎日忙しくて疲れてるし、もーこれ以上頭使いたくねー!みたいな日もあるしさ。」


沙和「あぁ…、そっか、鉄朗くんは正社員で、夜遅くまで働いてるし、そうだよね。

それに比べて私は定時そこそこで上がれる、しがない非正規社員…マンガ読んでくだらないこと考える時間も、そりゃ鉄朗くんよりあるよね。(遠い目)」


鉄朗「いや、なっ…?なんか俺が悪いこと言ったような雰囲気になってるし!?」


沙和「いやいや、冗談冗談… 。


うん、全部全部私の、くだらない偏見だって、本当分かってる。

色々ひどいこと言って、嫌な思いさせてゴメン。

でも、ちゃんと聞いてくれてありがとう。

ごめんね。鉄朗くんの好きなものを、ちゃんと受け入れられるよう努力するよ。」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆


ガタタン…ガタタン…

通勤電車に揺られる鉄朗。


(あれから、また前と同じように、沙和とは週一回程度会う関係には戻ったが…

俺の好きだった沙和の柔らかな笑みは、失われてしまった気がするー

ともすると、厳しい眼差しを向けられてばかりー

ワンピース前・ワンピース後で、明らかに沙和の態度が変わってしまった。


どうしてだ?

にわかには信じがたいことだが、本当に、俺たちの仲は、ワンピース一つでこんなにこじれてしまったのか!?

そんなことが、全世界の恋人達の過去に、かつてあっただろうか?


俺が…ワンピースを捨てれば良いのか?

いやでも、沙和にワンピース好きがバレてる以上、今更大した意味が無いような…

大体、俺だって好きなものを捨てるなんてこと、したくねぇよ。

それに沙和だって、受け入れられるよう努力する、と言ってくれてたじゃねぇか。

このままきっと、段々前と同じように、何事も無かったように、元通りに…戻れる…のか?

本当に?


そうだ、ハンターハンター…

沙和にこの前、あの話はしなかったな。

今度、話してみようか。

別に事態は好転しないかもしれないけど、少しは理解を得られるかもしれん…。)


☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆


深夜、沙和宅、自室。


沙和母「沙和ー!あんた何してんのー!?お風呂入んないのー!?」


沙和(うわっ、やば、寝ちゃってた?なんかお母さん怒ってるし…)

「はーい、今から入るよー、入りますー!」


(えーっと、着替えと、パジャマパジャマ…パジャマは…)


ズキ…

沙和は胸の奥に、かすかな痛みが走るのを感じた。

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