第5話 沙和の深いこだわり

沙和「そういえば、鉄朗くんの本棚に、ハンターハンターは無かったわよね?あっちは読まないの?」


鉄朗「え?ああ…うん、昔は読んでたけど…

でもあれ、結構文字多くて小難しいシーンあったりするし、ちょっと読むの疲れるっていうか…

あと、新刊出るの…遅いし…(ボソッ)」


沙和「フフッ、あれだけの巨匠が、未だに衰えるどころか、さらにすごい物語を生み出してくれるんだもの…!

少しくらい待ったって、バチは当たらないんじゃない?」


鉄朗(少し…?)


沙和「私はね、どっちかというと、ハンターハンターの方が好みなの。

鉄朗くん、途中まで読んだことあるなら、ハンターハンターの話しても良いかしら?」


鉄朗「ああ、大丈夫だ、分かる」


沙和「ハンターハンターで、壮絶な過去を持ったキャラと言えば、まずクラピカだけど…

仲間を理不尽な理由で殺された壮絶な過去は、クラピカの口から、短く淡々と語られるのみ。

何ページも割いて壮絶さを強調するのではなく、むしろ最低限の説明。

でも読者にはそれで十分伝わるし、

クラピカのその後の行動から、仇に対して深い怒りを持っていることもちゃんと分かる。」


鉄朗「ふむ…」


沙和「そして物語は進み、クラピカは強大な力を手に入れて、ついに仇の一人と対峙する。

仲間を殺した時のことを問うが、仇から返ってきた言葉は、到底クラピカを納得させるものではなかった…

怒りに燃えたクラピカは、仇に勝利して殺すが、その後のクラピカは…


『やったぞ、同胞達ー!!!』と絶叫するわけでも、号泣するわけでもなく…

ただ静かに、なんて言うかすごく、悲しいような虚しいような顔をしてるのね。

それを見て思ったの。


復讐って…そういうものよね…」


鉄朗(…ん?なんか今、沙和の髪がフワッと風になびいたような…気のせいか。室内だし。)


沙和「あと、これは新しい方の話だから分からなかったらゴメン…

蟲編のラストも、すごーく静かな、

少年マンガと思えないくらい叙情的で素敵な終わり方で…


そういうのが良いのよね。

感動って、個々の心の奥からふつふつと湧いてくるもので、決してバーンと押し付けられて出来るものではないのよ。

静かに、淡々としてくれた方が、感動できる。」


鉄朗「なるほど…沙和の言いたいことは、何となく理解できた。

うん……


でも、やっぱり本当にこれも個々の問題で、人によるっていうか…

分かりやすく、『ここで感動して下さい!』って示された方が、感動しやすいって人もいるんじゃない?」


沙和「えー、感動しやすいって何?

そんな人間って簡単なもんかな?」


鉄朗「いや、なんか感動に限らず、

何でも、はっきり言ってくれた方が

分かりやすい!っていうか。

あれじゃね、男女の違いじゃね?


よく女の人って、『言わなくても空気で察してよ!』みたいな無茶言う時あるじゃん。

それに対して男は、『いやいや、言葉ではっきり言ってくんねーと分かんねーよ!』みたいな。

男って単純だしさ、本当はっきり

説明してくんねーと分かんねー生き物なんだよ。」


沙和「……男って単純?

はっきり言ってくれないと分かんない生き物?

…何それ、誰が決めたの?

私その『男って◯◯』、『女って◯◯』っていう決めつけ、大っ嫌いなんだけど!」


鉄朗(う、うわぁっ!?

また何か、さらに地雷踏んだーー!!!)




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