我、五歳になる
「アルマ、誕生日おめでとう!」
「「おめでとう!」」
父親であるガランに続いて、アイリーンとウィンリが祝福の言葉を送る。
本日は我――アルマの五歳の誕生日。両親は元よりご近所のヴェルティ夫妻の娘、ウィンリも我を祝うために我が家にいる。
「ありがとう。父さん、母さん、それにウィンリ」
「えへへ、どういたしまして」
照れ臭そうな笑みを浮かべるウィンリ。これを可愛いと感じる辺り、我も大分人間臭くなったものだ。
「アルマももう五歳かあ……早いものだな」
「そうね。私もこの子を産んだのはつい最近ように感じるわ」
昔を懐かしむ二人。
我など最近どころか昨日のことのように感じてるぞ。伊達に五百年も生きていない。
「さてと、それじゃあ次はプレゼントタイムだ!」
そう言って、我を除く三人が綺麗な包装の箱をテーブルに置く。
「さあアルマ。好きなのから開けていいぞ」
テーブルに並んだ箱はどうやら我へのプレゼントらしい。昨年も思ったことだが、生まれた日をこんなにも祝うとは……やはり人間は変わった生き物だ。まあ悪い気はしないが。
「ええと、それじゃあ……父さんのから」
「おお、アルマ!」
歓喜の笑みを浮かべるガラン。うむ、キモい。
箱を開けてみると、中には一枚の紙切れが入っていた。取り出して確認すると、片面に『何でも言うこと一回聞く券』
「…………」
「ははは。アルマ、喜びの余り声も出ないか?」
「違うわ、あなた。あれは呆れてるのよ」
「え、何で?」
きょとんとした顔のガラン。
一瞬【ブラックホール】でこのバカを消し去りたい衝動に駆られたが我慢する。自分でもよく耐えたと思う。
「……ありがとう父さん」
「どういたしまして。それで、いつ使う? 父さんはどんなお願いでも聞いてやるぞ! 例えば、『父さんと一緒に風呂に入りたい』とか『父さんと一緒の布団で寝たい』なんてのでもいいんだぞ?」
この紙切れは後で捨てよう。我は胸中で誓うのだった。
とりあえず次にいこう、次に。
「次は……母さんのにしようかな」
「あら、嬉しいわね」
アイリーンの箱はガランのものと比べると縦に長い。恐らくネックレスの類いだろう。
我は早速中身を確認する。中身は案の定、ネックレスだった。
「うふふ、綺麗でしょう? それ、私の手作りなのよ」
確かに綺麗なものだ。金色のチェーンは美しく輝き、主役であるエメラルドを引き立てている。
「…………」
「あら? もしかしてアルマ、驚きのあまり声も出ないのかしら?」
確かに我は驚いてる。ガランのプレゼントはくだらなすぎて呆れたが、アイリーンのプレゼントも相当なものだと思う。
一見すると普通のネックレスに見えるだろう。しかし我には、これが魔法師でないものでも魔法が使えるようになる道具――
しかもこの魔道具で使える魔法はどれも上級魔法。恐らく我の身を守るためだろうが、五歳児に持たせるようなものじゃない。
「それはアルマを危ないことから守ってくれるお守りだから、常に肌身離さず持っておいてね?」
「う、うん。分かったよ母さん……」
アイリーンの過保護に戦慄を覚えながらも、我はウィンリのプレゼントに手を伸ばす。
「最後はウィンリのか……楽しみだなあ」
少なくとも、前の二人よりおかしなものが出ることはないだろう。
そんな安心感と共に箱の中身を取り出す。ウィンリのプレゼントはマフラーだった。
「最近寒くなってきたし、丁度いいかなと思って作ったの」
季節はまだ秋だが、確かに最近肌寒くなってきていた。それを考えると、このプレゼントはとてもありがたいものだ。
「ありがとう。大事に使うよ」
「うん、どういたしまして!」
我の感謝の言葉に、ウィンリは満面の笑みを作る。
「それじゃあ次は料理よ。 私が丹精込めて作ったんだから、たくさん食べなさい!」
その後はアイリーンの作った料理に舌を鳴らしつつ、我は誕生日を楽しむのだった。
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