3 鳶巣城
さっそく鳶巣城についてググッてみると、さっそく厄介な問題に直面した。
出雲市に《
前者は、1510年代に
後者の鳶巣城は、蒙古襲来に備えて築城されたらしい。戦国時代には毛利氏の支配下にあったが、1569年の尼子再興軍の挙兵の際に反毛利方の襲撃で落城し、その翌年に毛利軍に奪い返されてまた落城している。やはり関ヶ原の戦いの後に廃城となっている。
さて、それでは有害城はどちらの城と一緒に落城したのであろうか。
上で示したように、出雲の鳶ヶ巣城は二回の落城を経験している。一度目は1543年、二度目は1561年である。
このうち、1543年の落城と有害城の落城は結びつかないものと考える。
なぜなら、当時の●●地域は尼子氏の勢力圏であって、有害城はむしろ尼子氏の支城として鳶ヶ巣城を攻める立場にあったと解されるからである。位置的にも、有害城は尼子氏の本拠地・
では、1561年の落城はといえば、こちらはそもそも『落城』ではなかったのではないかとの疑問が拭えない。
なぜなら、当時尼子方にあって鳶ヶ巣城を預かっていた
また、そもそも鳶ヶ巣城の築城は毛利方が当地を制圧した1561年という説もあり、そうなるともう落城もクソもないのである。
こうしてあえなく出雲の線が消えてしまったので、俄然注目されるのが浜田の鳶巣城である。
同城は、1569年と翌1570年に落城しており、それらは尼子再興軍と毛利軍とのガチバトルの結果であることから、大いに期待が持てる。
このうち、1569年の落城というのは、尼子再興軍の蜂起に呼応した地元勢力が毛利方の周布氏から城を奪ったというものである。
この点、「鳶巣城落城の際に、有害城も落城せる」という『雲陽誌』の記述が同年の出来事を示しているとすれば、「鳶巣城の落城と同時期に、当時は毛利方の支配下にあった有害城もまた、尼子再興軍の手に落ちた」と解釈することになろう。
では、仮に『雲陽誌』の記述が、1570年の出来事を紹介していると考えた場合はどうなるだろうか。
1570年の鳶巣城の落城は、前年に尼子勢に占拠された同城を、毛利勢が再奪取したものである。この場合、『雲陽誌』の記述は尼子目線で見るとよい。
すなわち、「鳶巣城落城の際に、有害城も落城せる」という記述は、「鳶巣城が毛利勢に奪い返されたのと同時期に、有害城もまた毛利勢に奪い返された」と読むのが正しい解釈である。
さて、実はこの時点で、『雲陽誌』の記述がどちらの年について書かれたものなのかという疑問は、もはや私にとって意味をなさなくなっている。
なぜならば、どちらの説を取ろうとも、1569年に鳶巣城と有害城が尼子再興軍の手に落ちたこと、1570年に鳶巣城と有害城が毛利軍の手によって再奪取されたことには変わりないからである。
……言っている意味がわからないだろうか?
鳶巣城が1569年に毛利から尼子に、翌1570年に尼子から毛利に移ったのは歴史上の確たる事実である。また、少なくとも1566年の尼子氏滅亡から1569年に尼子再興軍が蜂起するまでの間、有害城が毛利方の支配下にあったこともほぼ間違いない。
その上で、『雲陽誌』の記述が仮に1570年の落城を示しているとすると、鳶巣城が毛利の手に戻ったタイミングで有害城も毛利の手に戻ったことになる。ということは、1569年~落城までの間に、尼子勢が一旦有害城を手中に収めていなくては辻褄が合わないのである。
片や、『雲陽誌』の記述が1569年の出来事を紹介していたのだとしても、尼子再興軍自体が1570年には徐々に勢力を失い、●●地域を含む一帯からほぼほぼ撤退している事実からすると、やはり有害城は鳶巣城と同時期に毛利方に復帰していると見るのが妥当な解釈というものである。
いずれにせよ、『雲陽誌』の記述が真実であって、そこに書かれた『鳶巣城』が浜田の鳶巣城(周布城)を指すとするならば、1569年と翌1570年の二度に渡って有害城が戦場となり、同城が落城したことが明らかなのである。
……ぶっちゃけ、私としてはこの仮説にすがるしかない。
その上で、有害城における二度の戦いで、それぞれの城主がどのような運命をたどったのかさえ明らかにすることができれば、●●の禁忌伝承の由来が事実に基づくものであるのか否かも判明するはずである。
問題は、当時の有害城の城主が誰であったのか、さっぱり見当がつかないことである。
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