第7話 少し成長した僕の日常 - Ⅳ -
- 5年前 スキルの儀の夜 [亜空] -
「し、失礼しました。
トキトと言います。」
僕は早口で自己紹介をすると、日々の礼拝の作法にならい祈りの構えを取る。
実際いっぱいいっぱいで、普段の日課が出たというのが正しい心境だろうか、、
”こちらの世界では神が近い存在とはいえ、あなたの驚きは当然の物”
”すぐに私の言葉を信じ、礼を尽くすあなたの心を嬉しく思います”
「ありがとうございます。
日々見守って下さる、神様に感謝を忘れた事はありません。」
穏やかな口調で言葉を下さるウカノミタマ様に、僕は習った中でも最大級の礼を必死にする。
『作法ってこれでいいんだっけ?
こんな神様に直接言葉を賜る機会なんて枢機卿クラス以上だったはず。
もしかしたら特別な作法が必要だったりするのか!?』
”そこまで畏まらなくても構いません”
”先ほど伝えましたが、私は異世界の神”
”こちらの世界で関わりのある存在はあなたのみ”
”この縁も奇跡の様な偶然の産物”
”といっても、あなたは納得出来ないでしょうね”
”…これをあなたに授けましょう”
そう神様が言うと、薄い一冊の本が目の前に現れる。
僕は絶対に傷付ける事の無いように丁寧に受け取る。
”この亜空間に居る間はあなたにも読めるはずです”
”
”これから毎日の様に顔を合わせるのです”
”自分自身で伝えるのは可笑しいですが、あなたの思いこそが
”本を授けましたが、気軽に接して貰って問題ありません”
”私にとってもこんな時間は今後一切訪れる事はないでしょうから”
「恐縮です。
さっそく読ませていただきます。」
僕は一言断ってから、慌てて本を読みだした。
『神様はこういって下さっているが、毎日会うのであればこそ正しい作法を覚えないと』
”かまいませんよ”
”読みながら聞いてください”
”この亜空は
”あなたが生まれた瞬間に得てしまった加護を、私がスキルという枠に当てはめた結果が本来の[亜空]スキルの物に近かった様です”
”社と鳥居そして二つをつなぐ参道がある事を除けば、普通の亜空スキルと変わらないと思います”
『正直、そんな事より神様から居る事が一番の衝撃です』
”また、今現在亜空内に存在している空間は弄る事は出来ませんが、今後あなたの魔力を変換し空間を拡張する事は可能です”
”拡張した部分に本来の亜空スキルの様に、倉庫を建てても研究所を建てても畑を作ってもかまいません”
”私も亜空内であれば有る程度は干渉可能ですので、魔力を対価に手を貸す事は可能です”
『亜空スキルってそんな事が出来るんだ!後で調べてみよう。
、、二拝二拍手一拝って初めて聞いた作法だ』
”ここで過ごした時間は現実世界でも同様に経過します”
”肉体は休んでいるため問題無いでしょうが、精神は起きている不安定な状態です”
『何かさらっと凄い重要な事を教えてくださっている様な気がするけど、考えが追い付かない』
『、、って、この
”幼いあなたは長時間こちらに居る事は控えた方が良いかもしれません”
”今後あなたの成長に併せて出来る事が増えれば、もう一度詳しく話していきましょう”
”難しい事を言いましたが、無理しない程度に亜空を気楽に使って貰いたいというのが私の願いです”
”現実世界が雨の日に、こちらで日向ぼっこをするだけの使い方でも良いのですよ?”
少し可笑しそうに伝えられたその言葉は、とても暖かかな印象だった
”さて、少し長く喋ってしまいました”
”鳥居の外にある陣の上に行けば戻れます”
”今日はもう戻りなさい”
”また会える事を待っていますよ”
「ぼ、私のために御時間を頂き、ありがとうございます。」
「色々わからない事が多いですが、よろしくお願いします。」
僕はお礼を伝えつつ一礼する
”ふふふ、あなたに良縁があります事を”
その声の後、風が吹き本が僕の手から社の横に落ちる。
そのまま風は僕の背中を押し鳥居の方へと促していく。
僕は参道の真中を歩かない様に、鳥居を潜り社に向かって一礼する
『これでいいんだよね?
まったく見たこと無い字だったけど、読めるのはセルフチェックに近い感覚だったけど合ってるよね?』
僕は色々いっぱいいっぱいになりながら、先ほど読んだ本の内容を思い出す。
陣の上に立った後、最後に振り返った僕は、ほとんど何も存在しない空間に神様が居る事が少し寂しく感じられてしまった。
陣が輝き、僕を現実世界に戻していく
「"ウカ様"、おやすみなさい、また明日」
僕の精神は眠りに落ちていく
『僕の声は届いただろうか?』
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”おやすみなさい、トキト”
”こんな会話をするのはいつ以来の事になるのか”
”今はこの時を楽しむ事としましょう”
”明日までに、スキルとなったこの空間について把握を進めておきましょう”
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特別な"亜空"の始まり
これから変化を続ける事となる空間が生まれた
こうして幼い少年と豊穣の女神は出会った
誰にも知られる事なく、女神"宇迦之御魂神"に見守られる少年の物語は始まった
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